出版社内容情報
パリの蝋人形館に消えた令嬢、そして発見された死体。娘はなぜ殺されたのか? 瀟洒な装いにメフィストフェレスの冷徹さと知性を隠すバンコランの名推理。本邦初の完訳版。
内容説明
行方不明の元閣僚令嬢が、他殺死体となってセーヌ河で発見された。予審判事バンコランは、彼女が最後に目撃された蝋人形館の館主を尋問したのち、その館へ赴き展示を見て回るが、そこで半人半獣の怪物像に抱かれた女の死体を発見する。頽廃の都を震撼させる異様な殺人事件の真相とは。優雅な装いの下に悪魔の冷徹さと知性を秘めたバンコランの名推理。新訳にして初の文庫版。
著者等紹介
和爾桃子[ワニモモコ]
英米文学翻訳家。慶應義塾大学文学部中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetchy
80
ハヤカワ・ミステリのみの刊行だった本作が新訳で刊行。海外ミステリ不況が叫ばれる今、このような慈善文化事業めいた出版がなされようとは思わなかった。東京創元社の志の高さを褒め称えたい。半獣半人のサテュロス像に抱かれた女性の遺体という怪奇的発端から舞台は仮面を被った会員制の密会クラブへと淫靡な様相を呈す。このミスマッチを見事ストーリーに仕立て上げたカーの手腕に拍手。特に真犯人は意外すぎてビックリしたが、その後で犯人が登場した章を読むと伏線張りまくりで、カー侮れぬの感あり。ただやはりバンコランは好きになれん!2012/04/22
ねむねむあくび♪
66
図書館の本。先に読んだ『皇帝のかぎ煙草入れ』が面白かったので、おかわりを借りに行ったらこれがあったので借りてみた(笑)(ノ´∀`*)主役の名前がバンコランって!?Σ(゜Д゜)パタリロのバンコランしかイメージ無いわ( ̄▽ ̄;)でも、とても面白い冒険活劇!!O(≧∇≦)Oミステリー色は薄く、退廃的なパリの雰囲気と、蝋人形館のなんとも古風で妖しい佇まい、紳士たちの活躍…。クラシカルな舞台設定丸ごと、愉しくて♪堪能しました~(*^^*)2015/11/21
藤月はな(灯れ松明の火)
52
しっかり、本格ミステリー。殺害を決めた瞬間がまさに「比類ない神々しいような瞬間」(By エラリー・クイーン)とも言える場面であったことがまざまざと想起されてより一種の神々しさの一層の悍ましさを募らせていました。蝋人形を芸術作品だと言い、誇りに思うオーギュストに同時期に読んでいる「猟奇博物館へようこそ」の腹裂け女などの医学的美作品を作ったのがかのミケランジェロであったという記述と繋がりました。バンコランの犯人に対して電話越しで死か暴露による辱めかを迫るシーンはまさにウェルト教授のように悪魔的。好きですが(笑2012/11/24
キムチ
49
読み終えてからえ~っていう感じでページを幾度繰ったことか。犯人の意外性、殺人の真相は言うまでもないがやはり第一の魅力は予審判事バンコラン。新訳は装丁に彼を載せ、十分に魅力を妄想させる。蝋人形館で起きた殺人事件、サテュルスに抱かれた第二の死体、展示物のナイフが実は凶器、増えている血は実は本物、そして恐怖の廊下は秘密社交クラブに通じておりその交友関係は・・なんてぞくぞくしない人がいるだろうかっていう混迷の恐怖一級品だった。2015/08/13
koma-inu
37
2点 バンコラン作品第四段。従来のホラー感よりは、スパイ冒険小説感があり、クリスティーのトミー&タペンスを思い出します。ミステリーとしての謎は、カーとしては平凡。しかしバンコランと犯人とのラストの駆け引きは、スリルあります。バンコランの残酷な提案を、犯人がどう飲むか?ラスト一行は色々な解釈ありますが、自分ならどうするかなぁ••と悩みました。2021/07/11