感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
208
プーさんの作者がミステリ好きの父のために書いたそうだ。灰色の輝く目をした探偵・ギリンガムが赤い館を訪れる直前、館の主人マークの兄で、悪人と噂されている男が射殺された。館の客たちは揃ってゴルフに出かけており、怪しいのは姿をくらましたマークだけ。ただし死体の横たわる部屋に入る際、マークの従兄弟ケイリーがわざわざ遠回りをした点に不審が残る。本作はほとんどの推理が探偵の観察に拠るため、読者はついていくしかないのだが、ワトスン役の青年との掛け合いで推理を語る所が面白い。メイントリックに難あれど細部はよくできている。2022/03/06
遥かなる想い
91
ミステリの名作を無闇に読みたいと思ったことがあった。『クマのプーさん』の作者の名作、という触れ込みは 、逆に奇妙な抵抗感があったが、意外に面白かったので、ほっとした記憶がある。 2010/05/12
セウテス
53
〔再読〕ミルン氏と言えば『くまのプーさん』の作者です。暖かみのあるテンポのよい会話と分かりやすい背景や状況の表現によって、作品全体が殺人事件にも関わらずユーモアに包まれています。この作品が名作と云われる理由は、殺害された遺体のトリックを初めて創作した事でしょう。今では何と言う事もないトリックと思いますが、それだけにたくさんの作品に影響を与えたと言えます。そして素人コンビのやり取りが、陰惨さを感じさせないメルヘンチックな雰囲気をかもし出しています。児童文学を書くのは高いセンスを必用とするのだと認識します。2014/07/15
Tetchy
35
チャンドラーが自身の論文「むだのない殺しの美学」でさんざんこき下ろしているのが本書だが、確かにこのトリックは今では受け入れがたい。なんせチャンドラーのいうように本当に警察の捜査に現実味がない。田園ミステリど真ん中すぎて実にのどかな殺人事件なのだ。ミステリ初心者には受け入れられるかもしれないが、大方の読者はなんじゃこりゃ?と思うことだろう。2009/02/24
ピッポ
30
【再読】A.A.ミルンは「くまのプーさん」の原作者。その作者がどんな推理小説を書いたのか興味がわきます。本作は敬愛する亡父に捧げた作品であることが冒頭に書かれていますが、二つの作品には共通してユーモアと暖かさが溢れているように感じます。二人のしろうと探偵がホームズとワトスン役となって事件を調査しますが、この二人のやりとりがなんともコミカルで微笑ましいのです。推理小説としては、多くの欠点や物足りなさもありますが、作者のこだわり、特に「しろうと探偵」に対するこだわりが感じられる古典の名作だと思います。2016/04/13