内容説明
証券業界の大立者ハリスンの持ち船、シグニット号の船室は密室状態だった。ベッドではハリスン本人が死んでいる。死因は炭酸ガスによる中毒。ベッド脇のテーブルには、ガスの発生源となる塩酸入りデカンターと大理石の入ったボウルが載っていた。フレンチ首席警部の入念な捜査の結果、事件は自殺の線が濃厚になる。だが…。企業ミステリの先駆者でもあるクロフツ、渾身の力作!
著者等紹介
クロフツ,フリーマン・ウィルス[クロフツ,フリーマンウィルス] [Crofts,Freeman Wills]
1879年アイルランド、ダブリン生まれ。鉄道技師であったが、病を得て長く休養した間に構想した『樽』を1920年に上梓し、好評を博す。1957年歿
中山善之[ナカヤマヨシユキ]
1935年生まれ。1960年慶応大学英文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
34
6歳で母が男と出て行ってしまったマーカム・クルーは、父が乗馬中に死ぬまでは、ケンブリッジで学生生活を送っていた。死後財産がなくなっているのに気づき、急遽働かなければならなくなる。折しも大失業次第、社交マナーと教養くらいしか売りがないマーカムは、父の友人の紹介で富豪の証券業者アンドリュー・ハリソンの社交面を取り仕切る秘書として雇われる。人柄に問題があり、また、二度目の妻とその息子、先妻の娘など、複雑な人間関係など全て完璧とはいかないまでも、すべりだしたマーカムの新生活は、ハリソンの失踪によって急展開。2021/08/04
森オサム
31
前半の密室殺人トリックの解明から、後半は被害者失踪の解明と、いずれもフレンチ警部はコツコツとじりじりと真相に迫ります。なので、途中は少々退屈にも感じました。終盤怒涛の追い込みでは有りましたが、犯人特定の証拠は、おいおいと突っ込みたくなる見落とし?、後回し?でしたねー(笑)。まあしかしながら意外な犯人、真相で結構楽しめました。文庫解説がかなり秀逸で、クロフツの作家人生がすっかり分かった様な気になりました(笑)。2024/07/26
geshi
28
推理小説というよりフレンチ警部の困難な捜査を見ていく警察小説。自殺と判断された事件が殺人と分かっても事態が進まず、失踪事件の掘り下げから徐々に真相に迫っていく。その迂遠な道筋を地道にやっているのでエンタメ性が低く、読んでいて何度か寝落ちした。サプライズ狙いの読者へのミスリードというか後出しジャンケンで意外な犯人出しきたようにしか思えないラストの展開はどうか。前半のマーカム視点の意味合いが内幕を見せるためで、後半への繋がりが全く無いので「これいる?」となってしまう。2019/06/13
タッキー
12
うん十年ぶりに読むクロフツのフレンチ警部シリーズ!復刊していて調べると、未読だったため、思わず購入!クロフツ得意の倒叙でないのが残念でしたが、典型的なフーダニット。犯人が意外だっただけに、その間の捜査って一体何だったのかと思わないではなかったのですが、奇抜性なく、関係者からの聞き取り、証拠の収集、推理と相変わらず、堅実に犯人を追っていく様子は健在でした。2024/05/18
ホームズ
11
やはりフレンチ警部シリーズは良いですね(笑)首席警部になってもカーター部長刑事を引き連れて自ら捜査に当たるんですね~(笑)現場が好きな警部さん(笑)疑惑の失踪事件から始まって船上での密室殺人事件。その後の捜査で徐々に真相が現れていく感じは相変わらず面白いです(笑)しかし犯人が意外すぎるし殺人の動機がクロフツのシリーズにしては珍しかったのが少し微妙な感じでしたかね(笑)2011/02/05