感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
316
★★★☆☆ クロフツ初期の作品で、事件を捜査するのはフレンチではなくタナー警部。タナーは仕事熱心ではあるものの、天才タイプではないので捜査に穴があり、それを埋めるべく別人視点の捜査パートもある。 全体的に『樽』に似ていて、丁寧にアリバイ崩しの過程が描かれており面白い。特にロイス嬢は誠実で知性も高い魅力的なキャラだと思う。 3人の容疑者の中で犯人と思われる人物は二転三転し、終盤にやっと確定したかと思ったところで、斜め上の真相が語られる。関係者の語りで解決という点が少し残念だが、それ以外は良かった。2023/03/02
セウテス
65
〔再読〕本作の探偵役はタナー警部ですが、シリーズ探偵フレンチ警部へ繋がる1人であると思う。謎の設定や地道な警察捜査、容疑者のアリバイを一つ又一つと崩していく、そのスタイルは本作で既に出来上がっている。ミステリは普通探偵と競い合い、示されたデータから探偵より早くに謎を解く事を目的とする。しかしクロフツ氏の作品では、読者が探偵と重なる。一緒に考える、という現代的スタイルの先駆者であると解る。容疑者が二人限なので、片方の無実を証明しようとする結果、作者の罠にはまってしまう。本当に凄い作品だ、とことん地味ですが。2018/03/27
みっぴー
32
クロフツに対する評価を改めねばなりません。樽以外の作品も樽に負けないほど面白いです。今回のアリバイ崩しは紙面からクロフツの熱意や執念のようなものが伝わってきました。精密機械のような寸分の隙もない完璧なアリバイを少しずつ切り崩していくタナー警部ですが、犯人に繋がりそうな店を一件一件訪ね歩き、ほんの少しの矛盾も見逃さない、その地道な捜査が今回の見所でしょう。内容が濃くて疲労感たっぷりですが、実に読み応えのある作品でした。2015/12/10
ホームズ
9
久々に読んでみました(笑)探偵役はフレンチでは無くタナー警部ですが相変わらずコツコツとした推理で徐々に真相に迫っていく感じが良いですね(笑)事件の真相が少し残念ですがかなり楽しめる作品だと思います(笑)2011/07/24
elf51@禅-NEKOMETAL
7
クロフツの第2作目。フレンチ警部は未だ登場せず,原型と思われるタナー警部が謎を追う。犯人と思われる男が逮捕され,アリバイを地道にたどる警部。もう一人の犯人もまたアリバイがあり,疑惑と検証に読者も翻弄される。そして第3の容疑者が現れ警部はポルトガルへ。プリマス,パディントン,サウサンプトンとイギリスミステリを読んでいるとお馴染みの地名が。旅情風景もいい。真相はまぁ,別な意味で意外だが,交錯するアリバイトリックをうまく結論づけて解決している。地味ながらなかなかいいと思う。2020/12/10