内容説明
1933年刊の本書は、著者としては異色の怪奇幻想譚を中心にした短編集である。霊媒のお告げに端を発する「赤信号」、ある幽霊屋敷についている子供の霊と遊び友達になる少年の幻想譚「ランプ」、霊界通信のスリルを扱った「ラジオ」をはじめ、「青い壺の秘密」「死の猟犬」などの好短編に、ミステリ映画の傑作『情婦』の原作として知られる「検察側の証人」を含む第一級の作品集。
著者等紹介
厚木淳[アツギジュン]
1930年東京日本橋に生まる。1953年京都大学経済学部卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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オーウェン
57
映画と同様鋭い切れ味のネタが最後に待っているクリスティ原作の推理もの。 映画の長さから長編かと思っていたが、短編でありかなりコンパクトな作品だったのは意外。 弁護士と証人とその妻が主な人物であり、いかにして弁護士が無罪へと導いていくのか。 またその裏にある陰謀。 すべてはあるトリックに起因するのだが、そのインパクトは映画と同じように小説でも驚きをもって迎え入れられる。2021/02/18
kate
26
物語が進むにつれ鮮やかに二転三転する表題作を含む短編集。表題作以外の作品はどれも怪奇・幻想趣味的な作品ではあるがどれも質が高くクリスティの多彩さが伺える。表題作は奇抜なトリックなどは一切使わずに物語を二転三転させ読者に先を読ませない見事な作品。戯曲の方は内容も少し違うという事なので是非こちらも読んでみたいと思います。2014/07/21
しゅわ
25
【図書館】戯曲「検察側の証人」を読んだ時、解説に「(もとになった)短編はストーリーが若干違う」とかいてあり、読み比べてみよう!と手に取りました。なるほど~ 基本のストーリーは一緒なのに、まったく違う構図で、テイストも…違う物語のようになっていて納得。戯曲に仕上げるにあたり、女史がいろいろ練り直したのがよくわかりますね。一緒に収録されているほかの短編は…霊媒や子供の幽霊?が出てくるし、多重人格の謎あり、予知あり、霊界との通信あり…女史としては異色の怪奇幻想譚を中心にしたもので、ビックリしました。2014/03/24
timeturner
4
表題作を除いては幻想怪奇の範囲に含まれる作品を集めた短編集。幽霊物語の仮面をつけてはいるけど実はミステリーというのもあれば、純粋なオカルトになっている作品もあり、へえ、ここまでこの手の話が好きだったのかとちょっと驚いた。2013/05/20
なつき
2
詐欺ありオカルトあり、もちろんミステリーあり。長編の妙手は短編の妙手でもあるんですね。しかも舞台映えしそうな話が多い。2012/10/06