感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
54
ファイロ・ヴァンスにとってグレイシー・アレンと言う少女はなんだったのか。読む前はコナン初期で語られたアイリーン・アドラーみたいな感じかと思ってたけど・・・まあ、ある意味間違っちゃいない、かも。何処かちぐはぐで、凄いもったいない感じ。神出鬼没な素人探偵グレイシー・アレンや面白く出来そうな謎が話の展開のせいで噛み合ってなく、不発になったので誰かこの話アレンジして何か書いて。と言いたくなる。なんか、もったいない。2024/08/06
LUNE MER
27
映画化を前提とする原作だったかと思うが、何故このような仕事を引き受けたのか、作者の意図が最大の謎かも。ずっとアルファベット6文字にこだわってきたタイトルの縛りすらも本作のみ放棄。ヴァン・ダインの二十則は過去の膨大な推理小説から帰納的に得た「傑作と駄作の分水嶺」(ガイドライン)であり、意図的にこの則に反することで逆に面白さに繋げる可能性を試みて成功したのが前半の名作群だという認識なのだが、本作は「則を守らないことでなるべくして駄作となる」という方のお手本であるとすら思える。2022/05/21
歩月るな
13
マーカムに恨みを持つ悪党が脱獄騒ぎを起こし、マーカムが殺されるかもしれないとヴァンスが出馬する今作、タイトルや制作背景などの挿話を抜きにして考えれば、よほど面白い。内容が展開する今作。作者の死期が近付いているらしいが、そこまで暗澹としているわけではない。衒学を削ればここまであっさりと、探偵小説を揶揄しつつひねりの利いた演出をしてくれ、シリーズらしい、いつも通りの幕引き。ヴァンスもそこそこいい年の「おじさま」であり、年を重ねると感傷的になる、などと嘯いて見せたり。巻末の詳細なキャラクタープロフィールは見事。2018/10/04
餅屋
5
ファイロ・ヴァンス11冊目▲カフェ「ダムダニエル」の密室で行なわれた奇怪な犯罪。大活躍する少女グレイシー・アレン▼タイトルロールの彼女、アホ毛がピョコピョコ跳ねたアニメ声を想定して読みました。よくもまぁ、こんなキャラをと思いましたが「当て書き」だそうです。いつもの富裕層相手と違い、ギャングやら皿洗い、工員相手であるあたり、ファイロの態度に違いがでているのか?出だしのファイロの態度から芝居がかっており尋常ではない。文字数のこだわりタイトルへの隠喩?読後にyoutubeで彼女の声を聴きナルホド…(1938年)2024/05/30
ぼくねこ
5
1938年発表、ファイロ・ヴァンスシリーズもついに11作目。今までは上流階級を舞台にした変人揃いのシリーズだったが、本作のヴァンスは庶民の世界で奮闘する。いわゆる"地元の犯罪"に首を突っ込むミステリなので、上流階級を覗き見るヴァンスものの醍醐味が薄れて、ややこじんまりとした作品になっている。導入部から読者を引きつける力が弱く、サスペンス風の展開も物足りない……が、なんだろう。それほど悪くないのだ。なんでだ。2022/02/11