出版社内容情報
他人と深い関係を築けなくなったのはなぜか――相手との距離をとろうとする人間関係のありかたや、「人それぞれ」の社会に隠れた息苦しさを見直す一冊。
内容説明
「人それぞれ」という言葉には、個々人の違いを尊重する一方で、考え方の異なる者同士が互いに本音で語り合わず、内面に深く踏みこむのを避けようとする側面がある。相手との距離をとろうとする人間関係のありかたや、「人それぞれ」の社会に隠れた息苦しさを見直す一冊。
目次
第1章 「人それぞれ」が成立する社会の条件
第2章 「人それぞれ」のなかで遠のいていく本音
第3章 「人それぞれ」では片付けられない問題
第4章 萎縮を生み出す「人それぞれ」
第5章 社会の分断と表出する負の意見
第6章 「異質な他者」をとりもどす
著者等紹介
石田光規[イシダミツノリ]
1973年生まれ。2007年東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学(社会学博士)。現在、早稲田大学文学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
102
おもしろかった。多様性とかダイバーシティが「良いもの」とされ、自分と違う意見に出会うと「人それぞれだから」で済ませてしまいがちな現代社会がはらんでいる課題と、そうした個人主義的な自由さがもたらす個人の孤独についてつらつらと書かれた一冊。多様性を追求することがかえって思想の偏りと社会的な分断を生んでしまうというのは矛盾するようにも見えてなかなか興味深いけれど、たしかになあと納得してしまう。あとは、人との対立と対話をフィクションに求めるというのもなるほどな、と感じた。2023/02/26
りょうみや
31
現代の希薄な人間関係の問題をうまくまとめている。人それぞれ、個人の違いを尊重→他人を否定できない、関わらない→分断、格差という流れ。さらにインターネットによって自分に近い意見の集団ばかりが固まり視野の狭さと分断に拍車をかけている。他者の異質性を知る、それと付き合うためには訓練が必要。著者は個人の自由とつながりの頑強さは両立しないとはっきり言っている。個々のトピック自体は聞いたことがあるものでも考えさせられる内容だった。2022/07/03
石油監査人
27
著者は、孤独問題を研究している社会学者。この本では、「人それぞれ」という言葉を切り口に、現代社会における人間関係の問題点を考察しています。スマホの普及などで可能となった、自分と意見の異なる他者に直接、合わずに生活できる「人それぞれ」の社会。しかし、その結果、孤独問題の深刻化など弊害が深刻になってきました。通信技術の発展の影で、人間関係がいかに蝕まれ、脆弱化しているかを、この本は教えてくれます。しかし、自分事として考えた時、異質な他者と対面で対話する適当な方法が、直ぐには見つからないのも悩みであり問題です。2024/07/26
まいこ
26
80年代から教育の場でも個性尊重が言われ、2000年代からは多様性も重視されるようになった。人それぞれ社会で自分はすごく気楽で、年々生きやすくなってるけど、自分で選んで結果を引き受けねばならないことが重荷になる人や、お互いの領域に踏み込まない関係にさみしさを感じるもいる2022/04/20
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
20
週末の読書会で紹介するためにざっと再読&エッセンス抽出。自分の会なので気負わずにサラッと。2022/05/25