出版社内容情報
夫である王と財産比べをして負けたコナハト国女王メーヴは、夫が持っている素晴らしい雄牛に匹敵する、アルスター国はクアルンゲの褐色の雄牛を奪うべく、大軍勢を招集した。一方迎え撃つアルスター国では、呪いのせいで男たちは戦うことがかなわず、十七歳の若き英雄クーフリンが、たったひとりで大軍相手に奮闘していた。アイルランドのイリアスとも言われる伝説を『琥珀捕り』の著者、詩人カーソンが語った、血湧き肉躍る英雄譚。
内容説明
アルスターの地クアルンゲにいる無双の雄牛を求めて、絶世の女王メーヴはアイルランド全土から五万を超える連合軍を召集、掠奪を目論む。アルスターの男たちが呪いに臥すなか、ただひとり大軍勢に挑むのは若き英雄クー・フリン。アルスター神話群のなかでも名高き英雄譚を日本語による完訳で贈る決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のれん
13
まさかこの本を文庫で読めるとは……! 古代アイルランド語、英語からの二重翻訳とはいえ、アイルランド神話古典の日本語訳としては唯一と言って良い。 今作は神話の戦争を両陣営各視点から語る英雄叙事詩だ。『イーリアス』と同じ語られることを主眼としているため、台詞の多くは韻を踏んだ音が重視され、場面毎に詩が詠われ、語りの修飾や描写はテンポ良く小気味良い。 しかし、本当に前近代どころか古代の文章の翻訳であるため、時系列を意識した感情の積み重ね、画を想像させる描写、心情を映す情景の修飾といったものは存在しない。(続く)2021/01/20
うた
12
12月のお題『牛』。発端はアリルとメーヴの財産比べ。アリルの雄牛に比肩できる牛を求めて、メーヴの軍勢はアルスターへと進軍する。迎え撃つは天衣無縫の英雄クー・フリン。八面六臂というか、軍対一人って範馬勇次郎かよというくらいの大暴れ。やってくる敵敵敵の首を刎ね、刺し貫き、粉々にする。クー・フーリン自身も人あらざる姿に変形して、石剣槍を振り回し、切り札のガイ・ボルガを隠し持つ。荒々しい物語なのだけれど、意外な結末をたどるのが、また面白い。2020/12/25
本とフルート
6
昔訪れたアイルランドの光景を思い浮かべながら読んだ。クー・フリンやメーヴたちも、私が過ごしたあの土地を踏んだかもしれない、と思うと心が躍る。土地に根付いた伝説特有の煌めきのようなものが、そこにあった。色々とよく分からない描写も、驚きながらも読むのが楽しかった。2021/01/11
クロノ
3
fateシリーズに出てくるクー・フーリンの出典とのことで興味を持ち読んでみた。思ってたよりもかなりはちゃめちゃで驚いた。読んでいる間は興味深く、なかなか楽しめた。2021/01/07
オタ小児科医
1
クー・フリンが大暴れしまくる話。これはアイルランドの光の御子ですわ。2021/03/19