内容説明
かつて万人恐怖の病であったハンセン氏病に冒され、二十四年の短い生涯を癩院で終えた天才作家北条民雄。川端康成がその才能に感動し、雑誌に発表、文学界賞を受賞した「いのちの初夜」をはじめ、世を震憾驚倒せしめた小説九篇、小品・童話、未発表原稿、覚え書、年譜などを収録。
目次
小説(いのちの初夜;間木老人;癩院受胎 ほか)
小品・童話(童貞記;白痴;戯画 ほか)
未完成作品(青い焔;鬼神;青年 ほか)
作品構想の覚え書(鬼神;地下室の青年達;家族崩潰 ほか)
北条民雄年譜
上巻編纂の辞(昭和十三年版)
覚書(昭和五十五年版)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
34
言葉がない。読んでいる最中ひたすら圧倒された。感想を書こうと思ったけど、僕如きではこの作品の衝撃を伝えられない。小説を読んで涙が出たのは何時以来だろう。「いのちの初夜」「吹雪の産声」、この二編を読んだ後、残りの一日、呆然として過ごした。こんな体験は中学以来だ。少し読み進めては後戻りし、何度も台詞をくり返し読んでしまった。願わくばこの作品群を一人でも多く読んで、この感動を体験してもらいたい。特に「いのちの初夜」「吹雪の産声」「望郷歌」は万人に読んでもらいたい作品だった。まだ少し余韻が残っている。2012/12/13
かやは
9
川端康成と義理の息子、川端香男里の編集による北条民雄全集。作品構成の覚え書きと川端康成によるあとがきが興味深かった。 川端曰く、「いのちの初夜」はオスカー・ベンルによるドイツ語訳、ルイス・ブッシュによる英訳があるそうだが、現代でも読まれているのだろうか。検索した限りではわからなかった。2024/06/26
オフ会@大阪
6
HANAさんがおすすめした本です2013/03/16
ぼっこれあんにゃ
6
☆図書館から借りたこの本の初版本は2円20銭であった。台湾や朝鮮では2円42銭とあった。あらためて購入した1冊二千円の文庫本は、もはや私の財産と言っていい。すばらしい作品集である。川端康成が世に送り出したこの作者は確かに天才であった。ハンセン病である彼が切り取る命の描写はほかに見ることのできない峻烈さをもっている。特に「吹雪の産声」、「いのちの初夜」を強くお勧めします。もっと、もっと、知られてほしい作家です。名作を超えています。2009/12/07
murumy
4
癩院受胎はあまりに胸を衝く作品である。民雄の小説は癩病に限らずひどい病の人一般を捉えていると考えて良いように思う。病態は多様でも体調が恒常的にヤバい状況に置かれた人の人間心理はそれなりの一般性を持つであろう。民雄の作品は「生命」というものの叫びにあふれている。2014/01/23