出版社内容情報
警察署に届いた電報には、
被害者だけでなく別の名前が記されていた――
ヴィクトリア朝の女性電信士、
技術と知識で姿なき殺人者を追う
黄金期の英国本格の香気溢れる第33回鮎川賞受賞第一作
ヴィクトリア朝大英帝国の巨大情報網の核となった電信事業。それを担う一員である電信士のローラ・テンパートンは、仕事と家庭を持つという夢の間で悩む日々を送っていた。
ある晩、彼女は電信局を訪れた局長アクトンの甥ネイト・ホーキンスを案内するが、アクトンは密室と化した局長室で死体となって発見された。容疑者と目されたネイトの無実を確信したローラは、自らの職能を活かして調査に乗り出す。翌日、警察署には謎めいた電報が届くが、そこには被害者アクトンともう一つ別の名が記されており……。
本格ミステリならではの趣向を随所に凝らした第33回鮎川哲也賞受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三編 柚菜
7
お、お、面白い…と打ち震えた今年注目されるべき傑作。密室殺人や『電報予告殺人事件』の題、誰もが怪しく見えてしまう翻弄がことごとく刺さる本格ミステリ。『電信士』という職業を無駄なく用いたお仕事小説。そして『女性電信士』であるローラの、“時代の理不尽”に対する毅然とした強さやラブロマンスでみせる弱さが堪能できるヒューマンドラマ。この三つの要素によって、クラシカルな海外ミステリを彷彿とさせる。全体的に起伏のある展開で、ずっと目を離すことができなかった。デビュー二作目にしてこの構成力に脱帽だ✉️2025/04/20