出版社内容情報
警察署に届いた電報には、
被害者だけでなく別の名前が記されていた――
ヴィクトリア朝の女性電信士、
技術と知識で姿なき殺人者を追う
黄金期の英国本格の香気溢れる第33回鮎川賞受賞第一作
ヴィクトリア朝大英帝国の巨大情報網の核となった電信事業。それを担う一員である電信士のローラ・テンパートンは、仕事と家庭を持つという夢の間で悩む日々を送っていた。
ある晩、彼女は電信局を訪れた局長アクトンの甥ネイト・ホーキンスを案内するが、アクトンは密室と化した局長室で死体となって発見された。容疑者と目されたネイトの無実を確信したローラは、自らの職能を活かして調査に乗り出す。翌日、警察署には謎めいた電報が届くが、そこには被害者アクトンともう一つ別の名が記されており……。
本格ミステリならではの趣向を随所に凝らした第33回鮎川哲也賞受賞第一作。
内容説明
ヴィクトリア朝大英帝国の巨大情報網の核となった電信事業。それを担う一員である電信士のローラ・テンパートンは、仕事と家庭を持つという夢の間で悩む日々を送っていた。ある晩、彼女は電信局を訪れた局長アクトンの甥ネイト・ホーキンスを案内するが、アクトンは密室と化した局長室で死体となって発見された。容疑者と目されたネイトの無実を確信したローラは、自らの職能を活かして調査に乗り出す。翌日、警察署には謎めいた電報が届くが、そこには被害者アクトンともう一つ別の名が記されており…。本格ミステリならではの趣向を随所に凝らした第三十三回鮎川哲也賞受賞第一作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
149
作家が得意分野で小説を書くのは珍しくないが、著者は近代英国史が専門らしい。前作『帆船軍艦の殺人』はフランス革命軍と対峙する英国軍艦が舞台で、本書ではヴィクトリア朝時代に通信革命をもたらした電信システムが犯罪の背景なのだから。歴史好きでも知らない人の多いニッチな領域だけに、読者を細かな知識でうんざりさせず引き込んで読ませる力が求められる。正直ミステリとしては今ひとつだが、19世紀後半の英国で働く女性の実像や、当時のインターネットと称せる電信が社会に与えた影響が歴史小説的に描かれて厚みのある物語になっている。2025/07/03
ちょろこ
121
着地までの時間が面白かった一冊。時はヴィクトリア朝大英帝国。主人公の女性電信士ローラが職能を活かして殺人事件を紐解くストーリー。この作家さんは馴染みのない世界を舞台にミステリを描くのが巧い。今回も電信の仕組みといい、想像力と共に時代と謎解きを味わえた。着地点はわかりやすいものの、不可解な局長の密室毒殺事件から、不可解な電報予告、そして行動力と頭の回転も抜群のローラの恋模様を絡ませて複雑な様相を見せながらの時間はこれぞミステリ!で面白かった。綺麗なこの終わり方も好き。次作はタイトルに少し捻りがあるといいな。2025/07/15
たま
80
日本の作家がヴィクトリア朝英国の電報局を舞台に書いたミステリ。こういう創作はたくさん調べる必要があって大変だろうと思うが、当時の電信機を使った密室トリックにアリバイトリックもあり、電信を使った大規模詐欺と恐喝も背景にあって、良く調べられ読み応え充分だった。「気送管」も登場し、このシステムを扱ったフランスの短編(たぶんルパン対ホームズ)、デュマの小説に電信を使った詐欺が出てきたこと等などを思い出し、懐かしく楽しい。ただローラが外泊したり母の家事を手伝わないのには違和感があった。ヴィクトリア朝でしょ?2025/09/01
yukaring
70
シンプルで端正な本格ミステリでかなり好みの1冊。19世紀のイギリスを舞台に女性電信士ローラが職場で起こった殺人事件の謎を追うストーリー。電信局の一室、密室となった部屋で局長の死体が発見される。甥ネイトンが疑われるが彼の無実を信じるローラはネイトンと二人三脚で真相解明に乗り出す。トンとツーで全てが表現されるモールス信号を使った電信事業がこの時代ならではで設定がよく活きている。また次々と起こる殺人事件や警察署に届く謎の電報、同僚達の秘密に尾行者の存在などまさに王道な“探偵物語”をじっくりと堪能する事ができた。2025/09/26
オフィーリア
59
おおこれは良かった。舞台は19世紀のイギリス、電信をメインテーマとしたミステリ。古き良き王道古典ミステリの味わいがしながらも読みやすく、電信を活用し尽くしたこの舞台ならではのトリックも好み。前作同様ミステリの土台となる舞台描写が抜群に上手いですね。2025/07/21
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