風よ僕らの前髪を

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  • サイズ 46判/ページ数 261p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784488028374
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

弁護士の伯父が何者かに殺害された。犯人は未だ杳としない中、伯母は密かに養子の志史を疑っていた――伯母から志史の身辺調査を依頼された元探偵事務所員の若林悠紀にとって、志史は家庭教師として教えた子供の一人だった。誰にも心を許そうとしなかった志史の過去を調べるうちに、悠紀は愛憎が渦巻く異様な人間関係の深淵を覗き見ることになる。圧倒的な筆力に選考委員も感嘆した第三十回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。

内容説明

早朝、犬の散歩に出かけた公園で、元弁護士の伯父が何者かに首を絞められて殺害された。犯人逮捕の手がかりすら浮かばない中、甥であり探偵事務所勤務の経験を持つ若林悠紀は、養子の志史を疑う伯母の高子から、事件について調べてほしいと懇願される。悠紀にとって志史は親戚というだけでなく、家庭教師の教え子でもあった。中学生の頃から他人を決して近づけず、完璧な優等生としてふるまい続けた志史の周辺を調べるうちに、悠紀は愛憎が渦巻く異様な人間関係の深淵を覗くことになる。圧倒的な筆力で選考委員を感嘆させた第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。

著者等紹介

弥生小夜子[ヤヨイサヨコ]
1972年神奈川県生まれ。白百合女子大学卒。第1回および第5回創元ファンタジイ新人賞の最終候補となった後、第30回鮎川哲也賞に投じた『風よ僕らの前髪を』で、印象的な人物造形とそれぞれの心の綾を鮮明に描き出す筆力、卓越した文章表現が高い評価を受け、優秀賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

213
そうだ、これは初恋の話だ。甘酸っぱいなんてことはなく、にがくて苦しくて…だけど心の奥深く生涯賭けた初恋なんだ。第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作品。よく練られている。この辺で収まるかと思う私を、これでもかってくらい打ちのめす。真実が明かされる度、行き場のない怒りと哀しみに心は覆われてしまうのが遣る瀬無い。志史と理都…彼らに肩入れしてしまう。彼らの7年。同じ方向を向いてそのために生きた7年は重い。いや、これからだ。怜奈と3人でこれから自由に生きていくんだよ!と強く願って読了した。2021/06/04

みっちゃん

165
夢中になって読んでしまった。「疑っているの、私」殺された元弁護士の妻が疑っているのは何と夫婦の養子、実の孫。一見何の関係もないようで、でも複雑に絡み合った出来事を一つ一つ、まるで蜘蛛の巣をかき分けるように繋いでいくごとに徐々に明らかになる、登場人物たちの複雑な家庭環境と虐げられてきた痛ましい過去。本人には何にも科はないというのに。胸が痛む。全てのピースが繋がった時に思った、誰が彼らを責められるだろう。「風よ僕らの前髪を吹きぬけてメタセコイアの梢を鳴らせ」ラスト一行のその先に。どうか希望が待っていて欲しい。2021/07/30

ちょろこ

157
繊細なミステリの一冊。叔父を殺したのは元教え子か?一歩誤ったら脆く壊れてしまいそうな心に少しずつそっと近づいていく繊細さを感じるミステリ。そこには想像以上の重い苦しみと真相が隠れていた。少しずつ事件の背景、複雑な関係への憶測が明らかになるたびにせつなさがはらり、はらりと舞い落ち、受け止めた瞬間、ズシンとした重さに変わるほど。解せなかった一つが解明した時、ネクタイが、苦しみがはらりと解ける瞬間を思い、涙。自分達で掴みたいものを掴んだだけ、掴み取って何が悪い⁇そんな言葉が真っ先に浮かんだ。せつない、その一言。2021/06/29

Kei

143
一見、裕福で何不自由のない少年たち。彼らが周到に緻密に、長い年月を耐えて、そこに至らなければならなかった来しかたに、憤りと悲しみを覚える。犯人ではないかと疑いながら、従兄が探る王道のミステリー。遡って、花びらのようなピースが幾重にも重なり、完成していく様が哀しい。彼らと違い、幸せで、痛みに気づかない、触れようとしない、追っていく従兄の方が、ある意味、試される。そして、完璧なパズルにも偶発が起こり、傷つけられる。そう、美と醜悪の背中合わせ。風よ僕らの前髪を吹き抜けてメタセコイアの梢を鳴らせ。切なき詩情です。2021/09/16

のぶ

132
この本はそれ程長くはないのだが、登場人物が多く、しっかり読んでいないと混乱する。登場人物表はついているのだが、自分も混乱した。加えて何を書いてもネタバレになるので、内容をあまり書く事ができない。さわりは弁護士の伯父が何者かに殺害されたところから始まる。手掛かりが掴めないまま伯母は密かに養子の志史を疑っていた。伯母から志史の身辺調査を依頼された元探偵事務所員の若林悠紀に事件を調べてほしいと頼まれる。この先、物語は様々な方向に展開する。とても複雑なロジックでできた本格推理だった。2021/05/20

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