出版社内容情報
計画は練りに練った。ミスなどあるはずがなかった。それなのに……いったいどこに落ち度があったというのだ!? 犯罪に手を染めた大学教授、推理作家、劇団演出家らの前に立ち塞がる、死神めいた風貌の警部の鋭利な推理。〈刑事コロンボ〉の衣鉢を継ぐ倉知淳初の倒叙シリーズ、四編を収録。
内容説明
私の誇りを傷つけるなど、万死に値する愚挙である。絶対に許してはいけない。学内で“皇帝”と称される稲見主任教授は、来年に副学長選挙を控え、恐喝者の排除を決意し実行に移す。犯行計画は完璧なはずだった。そう確信していた。あの男が現れるまでは。著者初の倒叙ミステリ・シリーズ、全四編を収録。“刑事コロンボ”の衣鉢を継ぐ警察官探偵が、またひとり誕生する。
著者等紹介
倉知淳[クラチジュン]
1962年静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。94年、『日曜の夜は出たくない』で作家デビュー。2001年、『壺中の天国』で第1回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
154
巻頭作が小説家(ミステリ作家ではないが)の殺人なのは、明白なコロンボへのオマージュ。古畑任三郎にも、倒叙ではないがクリスチアナ・ブランドにもあるしね。乙姫警部は出会った人それぞれに様々な形容をされるが、葬儀社のベテラン社員というのだけは不適当だと思う。実際に家族を送った経験のある者として言わせてもらえば、葬儀社の方は人当たりの良い、節度のある明るさのある方ばかりだった。亡霊のような、ホラー映画のような、陰気な方などいなかった。乙姫警部が必ずしも動機までは突き止められないのが、この手のミステリとしては異色。2018/11/11
ダイ@2019.11.2~一時休止
124
連作短編集。古畑式の倒叙もの。警察にその設定必要?ということはおいといて、倒叙は大好きなんで楽しめました。2017/12/24
ちょろこ
123
完璧だったのに…の一冊。じわじわ追い詰める倒叙ミステリ。名前は乙姫さんなのに、陰気で死神顔の警部が犯人を細かく隈なくつついていく過程はなかなかの面白さ。完璧だったのに…たった一つの小さなパーツに目をつけられた途端、ガラガラと全てが崩れていく過程は犯人と一緒に追い詰められる緊張感、脇汗を感じ、鋭い死神警部のつつきにはやっと息苦しさから解放された安堵感さえ感じた。自分の目では完璧と思えてもやっぱり小さなミスがあるのが世の常。相手を最後まで想う気持ちがせつない「恋人たちの灯」と「吊られた男と語らぬ女」が印象的。2023/03/31
NADIA
116
犯人の視点で冒頭に事件の場面から語られ、死神の風貌の乙姫警部と爽やかで警察官らしからぬイケメンの部下鈴木巡査の捜査側コンビに追われる「刑事コロンボ」タイプの短編ミステリ集。犯人(主人公)に共感を感じると追いつめられるハラハラ感を、共感できない場合は警察側のねちこい捜査にスッキリ感を覚える。ラストの4話だけどんでん返し的な仕掛けがあり「やられた」と思った(^^) ただ、マニアレベルのポップカルチャー知識を持つ乙姫警部の意外性は面白いが、キャラクターとしては「猫丸先輩」の方が印象的だ。2018/03/22
aquamarine
80
綺麗な倒叙ミステリの短編集。本当に小さな小さな違和感からほつれ目の糸を抜くようにするするっと犯人の隠しているものを表に出してくる。コロンボを意識したようだが、浮かんだのは古畑かな。もったいないと思うのは、死神のような容姿の乙姫警部、イケメンなのに自覚のなさそうな鈴木刑事となかなか強烈な二人を据えているのに、初出が読み切り連載だったせいなのか各話でその容姿だけが繰り返し語られ、それ以外がほとんど印象に残らないこと。一番の好みは男と女の間のすれ違いと葛藤に絶望のため息をはきたくなった「吊られた男と語らぬ女」。2022/10/28
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