出版社内容情報
それぞれに異なる四つの魔法にからむ、魔道師たちの物語四編を収録。『夜の写本師』で日本ファンタジーの歴史を変えた著者の初短編集。オーリエラントの魔道師シリーズ。
内容説明
『夜の写本師』の世界オーリエラントを舞台にした4つの短篇を収録。日本ファンタジーの歴史を変えた著者の初短篇集。
著者等紹介
乾石智子[イヌイシトモコ]
山形県生まれ、山形大学卒業。1999年教育総研ファンタジー大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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文庫フリーク@灯れ松明の火
97
お馴染みとなった巻頭の「コンスル帝国版図」デビュー作『夜の写本師』から6冊目は短編4話収録。最初の「紐結びの魔道師」も心ひかれるが、最も好みは親兄弟・村ごと皆殺しにされた恨み晴らすため、暗殺者〈顔のない魔道師〉となった男描いた「黒蓮華」矢傷から流れだす己の血。母と幼き弟妹の遺体の下、闇を土壌に漆黒の蓮が花開く‐動物や虫の亡骸を使う〈プアダンの魔道師〉は11歳にして死の淵から開花した。何くわぬ顔で、母と弟妹虐殺した男の家に奴隷として仕える魔道師。一気に殺すほど慈悲深くはない。じわじわと滅びの恐怖を→2013/11/02
ちはや@灯れ松明の火
92
闇の凝りを吸い込んでその生業の糧とせよ。史書は記さない、栄枯盛衰の縦糸に見え隠れする市井の魔道士を。足跡は語らない、闇を映す貌を蔽って無辜の民を演じた彼らを。怨嗟と呪詛にまみれた黒蓮華からこぼれ落ちた種は、昏い熱を帯びた胸の裡に芽吹く。闇を吸い、闇に食まれるか。黒白を撚り合わせた紐は強く因果を結び、強かな手弱女たちは護りの砦を張り巡らせ、夜に身を浸した写本師へと降り注ぐのは虹の雨。闇を吸い、光を吐くか。彼らの名は月がもたらす時の波に浚われてやがては消えていく。いつか綻ぶかもしれぬ黒蓮華の蕾を抱いたまま。 2014/03/02
ひめありす@灯れ松明の火
79
黒蓮華、紐結びの魔道師、闇を抱く、魔道写本師。四つの物語を紐で結んだら、どんな紐結びの魔法が私達に掛かるのだろう。黒を彷彿とさせる物語。黒蓮華のベルベットのような手触り。紐結びの結び目に生まれた暗い影がシュルリと解ける愉快な相棒達との日々。地下迷宮で交わされる女達の秘密は黒水晶の闇。手を差し入れると冷たく尖った切っ先が己と相手を共に傷つけるだろう。闇を抱くとはそういう事だ。魔道写本師は何度もブラックインキにペン先を浸す。とろりとあふれたインクは夕闇の色。それはやがて夜へと繋がり、夜の写本師の物語が始まる。2014/02/15
ままこ
78
だいぶ前に読んだ『夜の写本師』はダークな展開で読むのが辛かったがこの魔導師たちの短編集は登場人物も魅力的で読みやすくスッキリした読後感で面白かった。世界観を表した装丁も素敵。シリーズで読んでみたい。2018/07/13
桜父
62
『夜の写本師』『魔道師の月』『太陽の石』に続く4作目 コンスル帝国の起りから衰退する歴史の中で、紡がれていく4編の短編集 また、色々な魔法が出現して、面白かった。人間は、善と悪両方の感情を持ちながら、闇を抱えて生きて行くんだと改めて思う2015/01/14