出版社内容情報
『源氏物語』の著者・紫式部が残したもうひとつの書物、『紫式部日記』。時の帝の寵妃・中宮彰子が土御門邸で親王を出産する様子が描かれている。慶事を迎え、白一色で飾られ浮き立つ邸内──しかしそんな華やかな場に、物騒な盗賊が邸に逃げ込んだとの知らせが入る。そやつはどこへ? 式部は他の女房たちを動揺させぬよう、密かに盗賊の行方を探るが……。平安の都を舞台に、第13回鮎川哲也賞受賞作家が描きだす、王朝推理絵巻。
内容説明
平安の世、都に渦巻く謎をあざやかに解き明かす才女がいた。その人の名は、紫式部。親王誕生を慶ぶめでたき場に紛れ込んだ怪盗の正体と行方は?紫式部が『源氏物語』執筆の合間に残した書をもとに、鮎川哲也賞受賞作家が描く、平安王朝推理絵巻。
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
神奈川県生まれ。2003年、王朝ミステリ『千年の黙 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。卓越した人物描写とストーリーテリングで高い評価を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
120
紫式部日記に纏わる謎を描いた一冊。中宮彰子の若宮出産に向けて再出仕した紫式部が、女房たちが綴った出産までの記録をまとめ上げる傍ら白一色の宴に起きた数々の謎に迫るストーリー。今作はもの憂う女たちの巻といっても過言ではないほど。紫式部はもちろん、清少納言、赤染衛門、和泉式部ら女たちの心情と絡みが平安っぽくも現代っぽくもあり、スッと宮中絵巻に手招きされるようで楽しかった。そしてなぜ紫式部日記は面白くないのか…ストンと腑に落ちる鮮やかな紐解きもお見事。紫式部と道長ってやっぱり…なんて思える部分も含めて面白かった。2024/02/16
nico🐬波待ち中
65
『紫式部日記』の存在は知っていたけれど、それが中宮彰子の御産日記だったとは知らなかった。今から千年前に生きていた女たち記録。読者に読ませるために書いたものではなく、自分たちの生きた証を留めておくためのものだから当然読みにくい。映像に残すことはできない訳だから文章として書き残すしかない訳で、これが千年もの時を経てもなお残っている奇跡に感動する。しかも描かれているのは本来歴史に名を残すことのない官女たちの装束や出産に関する儀式など。これが千年もの間に人から人へ書き継がれてきたなんて、ほんとすごいことだと思う。2024/06/02
がらくたどん
62
おばさん作家紫式部の事件簿その2。その1では宮中猫騒動顛末記に絡めて後世の読者が感じる「源氏物語」のとある唐突展開と帖題のみ残るラストの謎に迫ったこのシリーズ。本作では中宮彰子の御産の祝宴に紛れて消えた手負いの盗賊の行方に絡めて、これまた後世の読者が感じる「紫式部日記」のちぐはぐな違和感の謎に迫る。紫式部が作中で「解く」設定世界の謎と読者が本作から「解かれた?」と思える原作が湛える謎の重層感が面白い。定子の遺児で作中で幼気に頑張る敦康君は二十歳までの命だったが熱血修子姫は五十代半ばまで気丈に生きたようだ。2024/04/22
るぴん
50
図書館本。『千年の黙』の続編。衣装や調度の全てが白一色に覆われた中宮彰子の初産当日、怪我をした盗賊が逃げ込んだことから始まるミステリー。「紫式部日記は何故つまらないのか?」という森谷さんの疑問が、こんなに壮大で面白い物語になるなんて、すごい‼前作では女童だったあてきが、家刀自を任されるほどの大人に成長していたり、純愛だった義清とも主従関係絡みで複雑になっていたり、感慨深かった。栄華を極める者と没落する者。シビアな貴族社会で起きた哀しい事件。奔放な和泉式部、聡明な中宮彰子がとても魅力的だった☆2013/07/19
kagetrasama-aoi(葵・橘)
38
「王朝推理絵巻 三部作」第二巻。中宮彰子の出産に纏わる事象を、紫式部の目を通して語られています。前作は日常ミステリでしたが、今作では殺人もあり、盗賊もありです。紫式部(香子)と阿手木のコンビは健在!平安文学好きは、清少納言派と紫式部派に分かれますが(多分)、私は清少納言(&皇后定子)なので、この展開はちょっと辛かったです(涙)。勿論、森谷氏の創作の世界の出来事なのですが、架空の世界だからこそ脩子内親王と敦康親王には救いの多い人生を歩んで欲しかったです。まあ、判官びいきと言ってしまえばそれまでなんですが。2024/02/18