内容説明
祖母・梅の危篤の知らせを受けた瑞輝は、北関東のとある町にやってきた。ひとまず持ち直し、親族一同ほっとして囲んだランチの席で、無職で閑人の瑞輝に、梅が経営する外国人向けアパート「ランタン楼」の大家という、面倒な仕事が押し付けられる。昔から入居者のトラブルが続き、近隣から迷惑がられているランタン楼だが、細くても背が高い瑞輝なら見劣りしないから大丈夫、と軽い調子で。喧嘩や夜逃げは当たり前、警察沙汰も珍しくないランタン楼の歴史に怯えつつ、慣れない大家業をはじめた瑞輝だが…。異国の地で懸命に生きる入居者たちと交流し、その窮状に知恵と度胸で関わるうちに、瑞輝の心にも大きな変化が訪れる。ランタンのともる古い洋館風のアパートを舞台に、気鋭の著者が優しい眼差しで綴った、国際色豊かな連作短編集。
著者等紹介
吉永南央[ヨシナガナオ]
1964年埼玉県生まれ。2004年、コーヒー豆と和食器の店を営む老女・杉浦草の活躍を優美に描いた「紅雲町のお草」で、第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
104
連作短編集。外国人向けアパートが舞台。海亀が一番良かった。タイトルの意味がよくわからないまま読了したがあとがきで納得。2017/11/21
ぶんこ
42
パープルグリーンの外観に白いベランダと、そこにランタンが灯るアパート。 素敵な佇まいに惹かれ、行ってみたいとは思いました。 ただ、七海子さん、冬吾さんのあっけらかんとした様子に、子供と20年以上音信不通にした父と、息子に話さずに連絡を取り合っていた母。 何だかなぁと思ってしまいました。 そして、罪は償うべきとの強い考えがあるので、殺されかかったのに、警察に言わない瑞輝さんにモヤモヤとして、物語にイマイチ共感できませんでした。 小説なのだから・・・と思いつつ、読後感はサッパリしません。2015/02/26
エンリケ
41
外人専門の安アパートが舞台。住民達が絡む事件を、大家になった若者が解決する。最初は嫌々だった大家の仕事。でも最後にはやりがいを感じるというのは良く有るパターン。だが巻き込まれる事件はかなり不穏。命まで狙われる羽目になってしまう。それでも続けたいと思うのはおそらくこの主人公の柔軟性。何故かヤバい状況にも平気なそのキャラは中々頼もしい。優しさ故に痛い目にも遇うが、そんな姿に住民達は心を寄せる。随所に異国で暮らす人々の悲哀を滲ませるのも読みどころ。彼らの滞日事情は切実だ。初読みの作家さん。この世界観は僕好みだ。2016/07/27
NOBU
38
「アンジャーネ」って、ラテン系の言葉かな?と思ったら関東の方言なんや。 頼りない若者が外国人向けアパート「ランタン楼」の大家となり成長する物語。「祖国を離れて生きる人と、ひととき同じ場所にいる。…時に火花を散らし、時に寄り添って風をよける。手さぐりでも体温を感じる関係だ。」 考え方も根本から違う外国人との関係は、大家族的な繋がりをつくるわけではなく、時に解り合えずシビアに終わる。それでも、「人に共通なのは、必ず死を迎えることと、幸せになりたいという思い」皆同じやね。でも最終話だけは許されへんで!怒!怒2011/06/22
nyanco
37
祖母が営んでいた外国人向けアパート・ランタン楼の大家になった瑞輝。いきなり血なまぐさい事件に巻き込まれ前途多難…。日系三世のマルシオは瀬戸さんに恩を仇で返したかに見えたが実は瀬戸さんを守る為だったり、キャバクラのオーナーに騙されたかに見えた中国人留学生・黄のしたたかさ…どの話も非常に巧いが、特に「パルザフ」が印象的だった。怪しげで関わりを持ちたくないアパートだろう。最初は同じように感じていた瑞希が、大家という仕事を恥じていた彼が真剣に大家業に取り組んでいこうとする成長ぶりが良かった。続→2011/02/24