内容説明
解体され、ナンバリングされた挙句、跡形も無く消え去ってしまった3人の死体。不審な人影の追跡劇と、密室からの人間消失。配達された小指。生乾きのコンクリート上に残された足跡。矛盾した犯人の行動。姿無き殺人者の仕業としか思われない不可能犯罪。杳として見えない犯行の動機。そして、山積する謎とトリックの解明に挑む名探偵―建設中のビルを舞台に組み立てられる、狂気のジグソーパズルの全体像は?本格ミステリへの情熱に満ちた、第11回鮎川哲也賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
74
鮎川哲也賞受賞デビュー作。蜘蛛手は建築事務所で施工図面を請け負っており、この事件が宮川との出会いになる。冒頭、いきなりいかにも〇ねて〇かせと言わんばかりのトレーシングペーパーによる平面図が4枚現れ、これだけでテンションがあがる。さらにプロローグで語られるのはバラバラ死体。人間消失?死体はどこへ?施工中のビルという特殊な環境では壁などに死体を塗り込めるのが簡単に思えるが、それが現実的でないことの説明が印象的。蘊蓄も楽しかったし、しっかり本格なのが嬉しい。一番驚いたのはトリックより蜘蛛手が想像した動機かも。2023/05/31
あっ!chan
41
初読み作家さん。バカミス狙いで手に取ったらなんと鮎川哲也賞受賞作の本格ミステリでした。オフィスビル新築現場が舞台で、建築技術がトリックのポイント(門田さん建設会社勤務の経験あり…納得)でもちょっとわかりにくいのではと読みながら心配に(私は業界の人間なので大丈夫だったけど)…アイデアは面白いけど、やっぱり技術的にはかなり厳しいと思うし、色々とツッコミどころもあるし、登場人物達のキャラも中途半端(初期の作品だから?)だし…ただ冒頭本人の次回作への意欲の宣言もあるので、期待を込めてちょっとおっかけますか…2020/08/31
タカギ
30
著者のデビュー作。鮎川哲也賞受賞作で、選考委員の選評が載っている。それを読むと、前回の鮎川賞が該当作品なしだったため、今回はできる限り受賞作を出したいということで、諸手を挙げて、という感じではなかったようなのがちょっと切ない。建設途中のビルに忍び込んだホームレスが見つけたのは、切断され、いくつものパーツに分解され、整然と並べられた複数の人間のものと思われる遺体。しかしその遺体は消えてしまう。建設中のビルのどこかに隠されているのか? 警察が探しても見つからない。解決編は面白かった。2022/05/13
み
19
ちと読みにくかった…、1ページに、みっちりな感じだからか?蜘蛛手さんの探偵の役が、ちと魅力度足りずに感じました。建築の蘊蓄が知れたのは興味深かったです。2022/01/23
よし
12
ナンバリングされた3人分のバラバラ死体や、建築中のビルに現れる人影、密室殺人に事故に見えた事件と盛りだくさん。建築に関する専門的な用語が多かったが、それらを上手く利用したトリックで、最後まで真相がわからず面白かった。所々説明不足の箇所があったのは残念だった。登場人物に魅力を感じないのは残念。もうちょっとキャラクター性があったら読みやすかったかもしれない。2024/07/09