内容説明
描くことに没頭し燃え尽きるように自殺した画家、東条寺桂。『殉教』『車輪』―二枚の絵は、桂の人生を揺さぶったドラマを語るのか…。劃期的な、余りに劃期的な、図像学ミステリの誘惑。第九回鮎川哲也賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
158
第9回鮎川哲也賞受賞作。デビュー作とは思えない出色の出来に、これぞ本格と唸らされた至福の読後感。画家でもある氏らしく、描かれた絵の内容が意味するもの、その絵で作者が意図するものを推し量っていく「図象学的追究」を取り入れた、新鮮且つ斬新な味付けが光る。ミステリとの相性も良く、作品を補強し、延いては作中手記や事件の根幹にあるものの補完にも大きな役割を果たしている。冒頭より全てが伏線だったことを知る圧巻の真相解明に加え、自ら死を選んだ一人の画家の悲哀を浮き彫りにした物語に於いても、非常に巧者な美しいミステリ。2016/09/23
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
113
【図書館本】美術館の学芸員である矢部が東条寺桂という画家の作品に興味を持ち、経歴を調べていくうちにある事件を読み解いてしまう。作中作にはすっかり騙され、終わり方もすっきりしていてよい。 ただ、最近横溝正史作品を読んでいるせいかミステリとしてはやや見劣り。 まず刑事が容疑者に何でも喋りすぎて違和感。桂の感情が読み取れず印象が薄く、中盤は少し間延びしている感じ。 でも、矢部が絵画に隠されたメッセージをイコノグラフィー的に読み解いていく箇所はとても面白かった。絵画が関連する話はやっぱり好きだなぁ。2018/05/08
nobby
99
大満足♪絵画からストーリーを読み取るという図像解釈学。これとミステリーを見事に融合、そのための自作をカラーコピーで掲載って凄すぎる!そして中盤からは二つ同時で凶器は一つなどという本格的な密室殺人。自分の浅はかな推理が当たったとぬか喜びしたのは置いといて(笑)そこから何度かひっくり返され、なるほどの伏線もたっぷりで、面白い!もうその一言で充分。これがデビュー作!そしてどこへ向かうのか、やっぱり順番に追ってみよう♪2016/06/17
あも
96
【よこさん課題本】ミステリ好き?なのに本書は未読?え、なんで?それ程の名作。良質なミステリは驚きをくれる。そこに一滴の切なさが加えられた時、それは傑作となる。自殺した異端の画家。彼の遺した『殉教』と『車輪』という二つの絵のモチーフを解体し、心の裡を追う前段からゆっくりと魂を絡め取られ、画家の手記を読む段にはこの物語の全き虜となっていた。作者本人の描いた作中画、額縁の様な見開きのデザインを含め本当に美しい本。二重三重の入れ子構造になった本作の、気付けば自身の属する現実さえもその一段に取り込まれていたようだ。2018/03/20
みっぴー
61
デビュー作…あり得ないです。凄すぎ。まずタイトルの時点で勝ってます。二つの絵画『殉教』『車輪』が、過去に起きた密室殺人を解く鍵になる。〝二つの密室〟で〝同時に起きた〟殺人事件。ただし〝凶器は一つ〟あなたなら、この謎を解けますか?余談ー解説が島田さん、有栖川さん、綾辻さんのゴールデントリオ…さらに余談ー『殉教』『車輪』は、作者、飛鳥部さんの自作。多才にもほどがある。2017/01/26