内容説明
ドイルからクイーン、クリスティ、乱歩、正史まで、名作を再読し、行間にひそむ謎を解く比類なき評論。
目次
緋色と赤の距離―アーサー・コナン・ドイル
それぞれなりの「ホームズ」論―ベントリー、ミルン、ノックス他
「ファイロ・ヴァンス」殺人事件―S.S.ヴァン・ダイン
「悲劇」を作る四つの方法―エラリー・クイーン「レーン四部作」
誰が「駒鳥」を忘れたか?―イーデン・フィルポッツ/ハリントン・ヘキスト
「樽」には何が入っていたのか―F.W.クロフツ
「樽」はどこへ行ったのか―ジョルジュ・シムノン
そして誰にも愛された…―アガサ・クリスティ
「ポオ」になろうとした男―ジョン・ディクスン・カー
俺を「名」探偵と呼ぶな―ダシール・ハメット
ぬばたまの闇に抱かれしものよ―ウィリアム・アイリッシュ
エリック・アンブラー問答
エドガワ・ランポの謎
横溝正史の不思議な生活―続エドガワ・ランポの謎
われらの黄金色の夏―エラリー・クイーン
著者等紹介
石上三登志[イシガミミツトシ]
1939年東京生まれ。明治大学文学部卒業。映画を中心に、ミステリ、SF、マンガ、広告等、幅広い分野で評論家として活躍するかたわら、雑誌『映画宝庫』『FLIX』の責任編集、翻訳、映画脚本等も手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
185
ドイルは大衆の求める理想の探偵ホームズを抹殺するために、現実的な犯罪…即ち「恐怖の谷」後半や、組織犯罪王モリアーティを創ったという話。またヨーロッパに憧れ厳密なパズラーを目指したヴァン・ダインが、大衆への奉仕に疲れ失速したのに対して、同じ道を辿ったクイーンは謎と論理の大衆化に成功する話。それを継承した横溝正史の捕物帖の意義という話。いずれも大いに納得させられた。クロフツやシムノンがトラヴェローグを模倣し刑事群像を描くことによって、(謎と論理に縛られない)フレンチ警部やメグレ警部を創っていく話も面白かった。2022/06/15
本木英朗
16
「創元推理21」および「ミステリーズ!」に連載された探偵小説論。個別の作家を中心として、その作品の真相まで踏み込んで様々な考察が行われている。特別目新しい指摘というものは無かったように思うけど、昔から漠然と感じていたが言語化できなかった部分を上手く言い当てていて、そこがいちいち腑に落ちる。 結局、ここで語られる「名探偵たちのユートピア」とは、シャーロック・ホームズと、ホームズを論じるために書かれ、その結果成立した長編探偵小説、これらを生み出した黄金時代イギリスを指すのだと思われた。(→)
本木英朗
14
この本は2007年に一度読んでからはそのままだった。今度が2回目だ。作者の描くドイルやヴァン・ダイン、エラリー・クイーン、クリスティなどはやはり面白かった。特にクロフツやウィリアム・アイリッシュがいいよね、うん。しかしちょっと作者の書き方に少しだけ違和感もあるかな。まあいいんだけどね。2019/03/17
本木英朗
11
日本のミステリ・SF・漫画なとの評論家である、石上三登志の短編評論集である。俺は東京時代に1回、弘前に帰ってから病気後の1回、読んでいて今回で3回目だ。「黄金期・探偵小説の役割」そのものだということは、俺でも分かる。ドイルはクリスティ、クロフツ、クイーン、カーなど出ていて、それだけで満足かなあ。でもセイヤーズやバークリーなどの作家が出てこないってところが、ちょっと物足りない。またシムノンやダシール・ハメットについては、俺自身ほとんど読めていなかったしさ、トホホ……。(→)2025/08/15
Ecriture
11
『緋色の研究』はホームズものを探偵小説・推理小説だと誰もが勘違いしているからこその叙述トリックであり、早すぎた西部劇・ハードボイルドの母体となったとするドイル&ハメット論。フロンティア消滅からフィクションの中に西部を開拓し始めたウェスタンやハードボイルドはドイルを祖に持つ。彼は探偵が解決できる程度に簡略化された世界(世界の終り)の不十分さを知悉していたがゆえに、緋色の研究や恐怖の谷にて二部構成をとり、現実らしい世界(ハードボイルドワンダーランド)を作り上げた。ホームズとドイルの不安を見事に分析している。2013/05/08
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