出版社内容情報
どうやら人類は滅ぶらしい。北極の天文台に残った老天文学者と幼い少女、そして帰還途中の木星探査船の乗組員たちは、旅路の果てに何を見るのか。終わりゆく世界の物語。
内容説明
どうやら、人類は滅亡するらしい。最後の撤収便に乗らず、北極圏の天文台に残ることを選んだ孤独な老学者オーガスティンは、取り残された見知らぬ幼い少女とふたりきりの奇妙な同居生活を始める。一方、帰還途中だった木星探査船の乗組員サリーは、地球からの通信が途絶えて不安に駆られながらも、仲間たちと航行を続ける。終末を迎える惑星の片隅で、孤独な宇宙の大海の中で、長い旅路の果てにふたりは何を失い、何を見つけるのか?終わりゆく世界を生きる人々のSF感動作。
著者等紹介
ブルックス=ダルトン,リリー[ブルックスダルトン,リリー] [Brooks‐Dalton,Lily]
バーモント州出身、オレゴン州ポートランド在住の作家。10代の頃から世界中を旅した経験を持ち、2015年4月、自伝的ノンフィクションMotorcycles I’ve Lovedで作家デビュー。同書はオレゴン・ブック・アワードの候補にもなった
佐田千織[サダチオリ]
関西大学文学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
82
読友さんが「2022年おすすめランキング」の一位にあげられていたので読んでみた。人類が終わってしまうらしい世界で、極北に取り残された老人と、木星から帰還する宇宙船。それぞれに、閉ざされた空間で、寂寥感が漂う。過去の思い出に浸りながらも、誰かと繋がりたいという想いが、この二つの世界を繋いでいく。厳しい状況を描いていながら、なんとも優しく美しい。おすすめランキングにあげていただいた読友さんに感謝。2023/01/16
星落秋風五丈原
56
最後の撤収便に乗らず、北極圏の天文台に残ることを選んだ孤独な老学者オーガスティン。帰還途中だった木星探査船の乗組員サリー。二人のパートが並行して描かれる。SF読みならよくやりたくなるのは、この二人の時制が同じか否かという推理。オーガスティンが聞いた「戦争」が、サリーたちの通信途絶と関係あるのか?二人の関係は?しかし本作はこれらの問いの他のいかにもSF的な謎「なぜ地球は滅びたのか」「地球に何が起こったのか」を追及することなく進む。「SFらしからぬ」という感想を抱く読者もいるのでは。2019/02/12
Hitoshi Mita
53
SF作品として読むとガッカリする人もいるかと思います。人類はどうやら絶滅してしまったようだ。人と関わる事を拒んで来た老天文学者と木製探査から帰還の途中にNASAと交信出来なくなって不安になっていく船員たち。その物語が交差する。なんとなく『渚にて』を彷彿とさせられる。時間そして情景が美しく静かに描写されていく。途中で物語がどこに向かっていくのかがわかった時にはそうかと思い知らされる。人の思い、愛とは。最後に彼らは何を見るのだろう。タイトルは原題の『グッドモーニング、ミッドナイト』の方がしっくりくる。2018/02/28
白玉あずき
48
SF風味をトッピングした人の孤独と愛の物語。もしくは天職に取り憑かれた人の夢と挫折と救いの物語。「ストーナ-」や「渚にて」がお好きな方には受けるだろうなと思う。人類の死滅の謎解きにこだわってはいけません、と言いながら、オーガスティンの高熱は慢性の放射線障害による骨髄障害かとあれこれ考えてしまうのは仕方がない。大自然、大宇宙の虚無、その中での恐ろしいほどの孤立感、恐怖感。人のつながりの有り難さ。心理描写に説得力があってじっくり読まされた。好きです。2019/04/02
おにぎりの具が鮑でゴメンナサイ
44
娘に会いたい。そればかり念じていたら、お正月は一緒に過ごすことができた。これまで何度か自分はもうだめだなと思ったけれど諦めがわるいせいでまだ生き延びていて、たとえ大きな望みは叶わなくともささやかに暮らしを営むことができるような気がしている。しかしひとりで飲む酒はやっぱり美味しくない。美味しくもないのにたまには酒を飲んで、懐かしんだり探したりしている。いつか自分が死ぬ日も人類が滅亡した次の日も世界は静かで穏やかで昨日と何も変わらず、死も幸せも望遠鏡の中に見えて、とかそういうことを多少酔いながら書く意味不明。2019/02/09