内容説明
自殺を図り奇跡的に助かったらしい写真家の女性は、昏睡から目醒めたとき過去数日間の記憶をなくしていた。遠雷のように響く記憶の断片。やがて、絶望と恐怖に染めあげられた出来事が心のどこかから甦ってくる…。誇り高いヒロインの果敢な闘いを描き出すミステリの新女王驚嘆の第四長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
31
よるべなき黒人女性が酷い扱いを受ける「蛇の形」とは対極の一代で巨万の富を築いた大立者の娘というヒロイン像。しかし富があるからといって幸福ではなく後妻と異母弟はとんでもないドラ息子たちで、生母がいない長女として溺愛されるジンクスは彼女達から恨まれる。昏い部屋とは文字通りの意味ではなく、ジェインの記憶の空白部分を指す。ジェインもまた三人称語り手の一人であり、正直とは言えない。なぜならば、医師や警察に話した事とは別の内容を、密かに友人達に電話をして確認しているからだ。 2021/03/05
mejiro
14
作品ごとに手法を変える器量に感嘆する。記憶喪失を扱ったミステリは数多いだろうが、本書はその中でも秀作だと思う。なにかを隠している怪しさを含め、主人公が魅力的。複雑な構成と二転三転する展開は期待を裏切らない。アダムがなぜベティと結婚したのか…これがいちばんの謎かも。2018/10/28
對馬 正晃
6
時間はかかりましたが、なんとか読了。謎が謎をよぶ展開で、最後まで誰が犯人なのか分かりませんでした。そしてその犯人ももしや・・・?というヒネリが効いていて、さすがといった感じです。ページターナー的ではなく、じっくりと読み進める作品でした☆2014/11/16
おーね
4
なんだか共感できずに読み進めました、状況がよく分からない。なぜわからないのだろう。圧倒的な父親がよく見えない。キリスト教が判らないとダメなのかなあ? 主人公があまり動かない設定は面白かったですし、固定観念でガシガシの警察も面白いと思いましたが。2013/10/03
spica
3
記憶喪失の女性は殺人事件の犯人なのか。解説の「決着のつけ方を書いた小説」という評に、なるほどと納得。謎解きはあくまで添え物。メインは登場人物の心理と、読者の解釈の仕方。最大の黒幕(?)の存在感がすごい。2014/10/26