内容説明
怪奇小説の真髄は短篇にあり、醍醐味はその語り口にある―一瞬の怪異も鮮やかなアスキス女史の佳品を筆頭に、狂気と超自然のあわいを描いたギルマンの逸品など、通にして手練の三人が選り抜いた、悠揚迫らざる古典女流の十二篇。趣向を凝らした怪談噺の数々、恐怖の愉しみに舌鼓をうたれんことを―。
著者等紹介
アスキス,シンシア[Asquith,Cynthia Mary Evelyn Charteris]
ウィームズ伯の娘、英国首相ハーバード・アスキスの次男と結婚。父も夫も著述家である。『ピーターパン』でお馴染みのJ・M・バリーの秘書を永く勤める。バリーの思い出を綴った回顧録A Portrait of J.M.Barrie(1954)や第一次大戦の私的記録、児童文学などによって今に名が留められているが、怪奇小説のエンスージアストにとってはもちろんこの分野を語る際には言及を欠かすことのできない名アンソロジストとしての顔のほうがお馴染みである。アスキスは七冊ほど怪奇小説のアンソロジーを上梓しているが、ことに初期のものの評価は高く、文壇における広範な交友関係を利用して原稿を諸家に依頼し、マッケンなどごく一部の作品を除いては書き下ろしであるのが特徴である。書き下ろしアンソロジーが優れたものになる確率は相当に低いと思うのだが、いかなる恩寵ゆえかアスキスの集は圧倒的に高い質を誇っている。彼女のアンソロジーが初出となる作品にはロバート・エイクマンの「鳴り響く鐘の町」、E・ボウエンの「猫は跳ぶ」、ヒュー・ウォルポールの「ラント夫人」、ティンパーリーの「クリスマスの出会い」などがあって、とにかくそのほとんどが傑作と呼ばれうる質を備えているのは驚きである。怪奇小説のアンソロジストとしてはまず間違いなく五本の指に入る人物であろう。また、各アンソロジーには必ず自作を一篇収録していて、それらの作品はThis Mortal Coilのタイトルで1947年にアーカム・ハウスから上梓されている。作品の傾向としては、ヴィクトリア朝以来の女性作家の伝統に従ったかのような、しごく穏和なゴースト・ストーリーが多い。平井呈一訳すところの「角店」は怪奇小説のファンならば好きにならずにはいられないような後味の好い作品である。「追われる女」には或いは典拠があるのかもしれない。しかし効果的な舞台設定で手際よくまとめたところはアスキスの手柄であろう
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感想・レビュー
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KAZOO
帽子を編みます
annzuhime
ニミッツクラス
メイ&まー