内容説明
「私は遠隔のこの地にいたまま、目的の人物を思念によって殺してみせる」降霊会の夜、霊媒師によって宣言された殺人予告と、その恐るべき達成。すべての家具が外に運び出された状態の家の中で首を吊って死んでいた男。密室状態の現場。踏み台にされたレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿本と鏡文字の考察。第二の不可能犯罪の勃発。そして読者への挑戦―。本当に犯人は霊媒師なのか、違うとすれば果たして犯人は誰なのか?“さかさま”尽くしの大胆不敵な事件に挑む美形の芸術家探偵・妹尾悠二の活躍を描いた、鮎川哲也賞受賞作家の鮮やかな本格探偵小説。
著者等紹介
飛鳥部勝則[アスカベカツノリ]
1964年新潟県生まれ。新潟大学大学院教育学研究科修了。98年『殉教カテリナ車輪』で第9回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。『バベル消滅』『砂漠の薔薇』など、自ら描いた絵画を内容に取り入れる斬新な作風で話題となる
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感想・レビュー
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🐾Yoko Omoto🐾
139
飛鳥部作品初読み。文句なしの直球本格に大満足で読了。思念で人を意のままに操り死に至らしめたとの霊媒師の言葉通り、二人の人間が不可解な死を遂げた。超能力による遠隔殺人としか考えられない死の真相を芸術家探偵“妹尾悠二”が解き明かす。「探偵小説作法十三箇条」なる法則を掲げたミステリ談義や美術に関する小ネタなど蘊蓄が魅力的で、何と言っても「読者への挑戦状」は激熱。扱うモチーフが無駄なく生かされた展開、ふんだんに撒かれた真相へのヒント、美しい伏線回収、秀逸なタイトルなど、手堅くフェアに纏められた気持ちの良い秀作。2015/12/07
nobby
107
『ラミア虐殺』に続く本作は、読者への挑戦付き正統派本格ミステリー。超能力による予告遠隔殺人なんてトンデモ展開に、序盤はすっかり前のめり。ただ中盤は霊媒師の妖しさや怖さやら、人物の個性を描くのがちょっと退屈…ミステリ談義や“探偵小説作法十三箇条”なども飛鳥部作品特徴の蘊蓄披露かと思いきや、これは大いに伏線だった(笑)その種明かし内容は、感嘆よりは少々拍子抜けな感が否めない。芸術志向のない自分には「宇宙の缶詰」的な思考があまり響かず…それでも序章からの終章はお見事!2017/02/03
夜間飛行
88
会話のセンスやリズムの良さは私の好きな横溝正史と似ている。探偵役の妹尾悠二もなかなかにかっこよかった。降霊会で予告された遠隔殺人、逆さまの密室…と心をそそる謎が次から次へと提示され、妖しい霊能者と探偵の対決に夢中になってしまう。こうした子供だましみたいな設定を侮ってはいけない。これは作中でも称讃されているカーを意識した趣向なのだろう。奇術的パフォーマンスが好きな読者にはたまらない道具立てと思われる。ただし、いかなる場合も真相の解明は論理的かつフェアであってほしいわけで、その点ではやや不満の残る作品だった。2019/01/10
雪紫
69
再読。降霊会。相次ぐ遠隔殺人の予告。整えた伏線。そして友を気に掛け、悪を憎む正義の名探偵。飛鳥部さん作品では異端=周囲にとっては王道な実に王道な本格ミステリ。いや、改めて読むと飛鳥部さんが本当にまともなの書いてるんですよ・・・。まあでも、ミステリやドラマ論だけでなく《読者への挑戦》とかエピローグで彼のミステリらしさは詰まってるんですけどね(確かに不可能)。2022/08/17
だんじろー
43
確かに“正統派”。いやいや、むしろ正統派過ぎるくらい真っ直ぐな本格であります。読んでて違和感を覚える部分は、後半でしっかり効いてくるし、読者への手がかりも丁寧にばら撒いてくれているし。ただ、いかんせん会話文がとっつきにくくて。特に女性の言い回しには辟易してしまいました。肝心な謎解きの方も、想定内の範囲に収まって意外性に乏しかったかなあ。これも小島正樹氏や門前典之氏を読み過ぎた弊害かも、と軽く自虐。嫌いじゃない作風だけに、まあ今回は合わなかったということで勘弁してもらいましょう。2016/05/05
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- 和書
- 美しき魂の告白 角川文庫