出版社内容情報
『結晶世界』『ハイ・ライズ』などの傑作群で、20世紀SFに独自の境地を拓いた鬼才の全短編を五巻に集成。第三巻はサイエンス・フィクションを文芸的手法を用いて、小説に新たな次元を切り開いた濃縮小説(コンデンスト・ノヴェル)の代表作「終着の浜辺」、本邦初訳となる「光り輝く男」など20編を収める。
内容説明
硬質な詩情が描く、終末世界のヴィジョン。『沈んだ世界』『結晶世界』『ハイ・ライズ』で知られる鬼才の全短編を、執筆順に集成する決定版全集。第3巻は本邦初訳「光り輝く男」ほか全19編。
著者等紹介
バラード,J.G.[バラード,J.G.] [Ballard,James Graham]
英国を代表する作家。1930年、上海生まれ。SFの新しい波運動の先頭に立った。終末世界を独自の筆致で美しく描き出した“破滅三部作”と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』や、濃縮小説と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性が打くの読者を魅了した。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
30
砂漠、海岸、廃墟……そこはかとなく漂う終末感。オブセッションに取り憑かれて破滅してゆく男、青白い肌のファム・ファタール、女ヴァンパイア=蛇女のイメージ。繰り返されると心底疲れます。妙な形容表現が多く、訳者は苦労しただろう。さらに描写の視点が曖昧で、比喩が凝り過ぎているものだから、風景やイメージが全然浮かばず、なんだかチグハグで読んでいてちょっとイライラしてくる。SF要素もいい加減。バラードはずいぶん昔に一冊だけ読んで、もういいやと思ったのも、そんなところに原因があったのかなあ、と。2022/08/27
澤水月
28
本邦初訳、光り輝く男が後の傑作長編!63-66は何と豊穣なイメージ、言葉の魔力に満ちていることか。自転止まり時間と都市が二つ名の永遠の一日、“7時のコロンビーヌはいつも夕暮れだった”…素敵な冒頭!デルヴォー絵が登場(レオノール・フィニも忍ばせてると思う)…他にもベルイマン、ヒチコック、ダリなど割とまんまモチーフ明かす書き方だったと年代順読みで改めて思う。終着の浜辺、溺れた巨人などザ・バラード印作に限らずUFOコンタクティ、ミステリ、純然幻想耽美、先端医療悪夢、一発アイデアなど幅広い(名付けについてコメに続2017/06/06
ニミッツクラス
20
17年の税抜3600円の初版。英国01年の『The Complete Short Stories』の98編を5分冊した3巻目で19編を収録。概ね『時間の墓標』『溺れた巨人』に収録。SFなのか?と疑問の湧く「浜辺の惨劇」は『死亡した宇宙飛行士』に収録。今回の目玉は初訳の「光り輝く男」。64年の『結晶世界』へ続く完成度の高い原型作で、これが初訳!って驚く。「深珊瑚層の囚人」「消えたダ・ヴィンチ」「火山は踊る」「夢の海、時の風」は本邦初書籍化。この4編はどれもバラード的で…ディックには書けない筆致。★★★★★☆2019/05/13
rinakko
14
短篇集『溺れた巨人』が好きなので、再読も含めてとてもよかった。とりわけ楽しみにしていた初訳の「光り輝く男」は『結晶世界』の原形で、あっという間に本当にあの結晶世界へ連れ去られてしまう。やはり魅入られ戻りたくなくなった。再読で大好きな「永遠の一日」は、デルヴォ―の『こだま』の中へとさ迷いこむ読み心地。うとり。2017/06/19
vaudou
9
これこそ時間を取ってじっくりと耽溺するに相応しい書物。『結晶世界』を再読したくなる、初訳『光り輝く男』が読める幸せ。2018/01/31
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- 和書
- 太陽の帝国 創元SF文庫