出版社内容情報
自己自身と自己の自由からの逃避を分析した『自由からの逃走』の続編。いかにして自己自身と自己の自由が獲得されるかが分析される。詳細な事象の説明を機軸にした複雑な現代社会における倫理の本質と人間追究の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tai
18
良心は「人が自己について抱くべき正しき誇りを守り、同時に自らの自己に対して然りという能力である」。人間は自らの能力を生産的に利用する以外に、世界と一致しながら、自分自身とも一致感を持ち、他者との関係を持ちながら、同時に独自な存在として自己を保持する方法を持たない。良い結果、悪い結果、決定は人間による。それは、誠実に自分自身を取り上げ、自分の生命と幸福とを問題にする、その人の能力によるものであり、自分と社会の道徳問題に直面しようとする意志による。自分自身であろうとする、生きようとする勇気とにかかっている。2023/01/15
KIO
3
フロムの著作を読むことで、いかに自由という価値が尊いものなのか、より深く理解することができました。近代より前の国家では、自由はよくない、規範に沿わなければならないという価値観が強かったのですが、人間は自由でよい、なぜならば自らの責任をとれるからだ、という一段高い価値観の創出(権利自由、所有権絶対、過失責任というやつです。)によって、自由主義国家が出現出来たのだと思います。自由に対して人間信頼の原理があることで、人は可能性を手に入れた部分があると思うのです。自由主義の逆機能は忘れてはならないですが。
ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き
2
再読。フロムはファシズムに対抗して、大きな研究を一時中断して『自由からの逃走』を緊急出版したが、その時に漏れた内容も含めて、人間の性格や自由について様々な観点から論じた本。その意味で『自由からの逃走』の続編と言える。心理学的・性格学的な観点を含めた新しい観点から倫理学を扱った本でもあり、権威主義的倫理と人道主義的倫理に分けて議論を進めてゆく。前著より内容的にも深いところがあり、また、ごちゃごちゃと書かれていて分かりにくいところが多いが、無視できない内容。少なくとも後1~2回は読み返したい。2010/08/08
いとう・しんご
0
H.ヨナスの「生命の哲学」を読んで、同じような感動を覚えた本があったよなぁ・・・と再読。「徳とはそれぞれの有機体のもつ特殊な可能性の展開のことである。人間にとっては、それはもっとも人間的な状態をいうのである。」p47、「最上の条件下にあってさえも、人間の可能性は一部しか実現されない。人間はいつも完全な誕生の前に死ぬのである。」p117、「人生におけるもっとも大きな仕事は、人が自分自身に誕生を与えることであり、自分の内にある可能性を実現させることである。」p278などの言葉は、ヨナスに重なり合っている。2021/04/12
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