内容説明
ひと皿のナポリタンが体現する戦後から現在まで。食の個人史が照らし出す、ケチャップ味の向こう側。
目次
いかなる理由でナポリタンなのか
元帥とイタリア風のスパゲッティ
小麦をどう食べるか
かあちゃん、腹へったよう
デュラム、セモリナ、アル・デンテ
なんでも好きなものを食べたまえ
御八つ、お三時、三時ですよ
ケチャップの瓶を逆さに立てる
ナポリタンをシェアしたくない昭和の子供
沈んでいく日本、浮かび上がるナポリタン
ナポリタンのウィンドー・サンプルを探す旅
トマトが僕を追いかける
ナポリタンのある街
トマトにおけるファンタジーという日常
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
24
「ナポリ」とはスパゲティ・ナポリタンで、占領が終わった少年期に著者は出会っている。トマトソースだけの貧民の食物が、アメリカで変質し、さらに日本食として改変された。その混血性が、ハワイの日系二世を父に持つ著者に響く。偉大な庶民の国アメリカを体現するケチャップも、ナポリタンを通じて日本に浸透した。考察はナポリタンのオヤツ的性格や、日本人に近しいその語感、トマトの思い出と続く。加工食品の項では、文房具に対するのと同じ拘りが弾け、著者のダンディズムが見えて楽しい。ナポリタンは、著者の美学を支えるルーツの一つらしい2017/07/30
ジロ
9
イタリアのナポリじゃなくて、スパゲッティ・ナポリタンのナポリ。1冊書き綴っちゃうナポリタンへの愛の大きさよ!戦後どのようにナポリタンが日本で普及されていったのか、ケチャップや小麦粉などの話を交えながら説いていく。子供の頃はスパゲティはイタリアン(関西在住)かミートソースしかなかったな、と思い出した。次の週末の昼ごはんはナポリタンとチキンライス作ろうかな。2020/01/19
Takuo Iwamaru
8
タイトルだけみると紀行文のようですが、実は「スパゲティナポリタン」についての著者の思いが炸裂した一冊です。「ナポリタンとはなんぞや」という著者の疑問から始まり、ナポリタンにまつわる思い出、さらにスパゲティやトマトケチャップやパスタ関連商品やトマトそのものにまつわる歴史、著者自身の思い出、そしてこれでもかの徹底分析が、選び抜かれた言葉で綴られるまことに不思議で面白い一冊です。著者によるスパゲティ・ナポリタンへの賛美歌とでも言えましょうか。読後の効果としては、読めば確実にパスタをゆでたくなります。2011/12/03
moonset
6
実は、ナポリタン賛歌。スパゲッティについて、ケチャップについて、トマトについて、片岡氏独特の語り口で淡々と繋がれていく言葉。しかし片岡氏はナポリタンはこれぞ日本文化だと説く。戦後の日本を背負ってきたナポリタンという食文化の歴史を、ゆっくり読み解いてみましょう。空腹時の読書厳禁!2013/08/30
あつもり
6
ナポリタンについてのエッセイと言ったらいいのでしょうか。話題はナポリタンにとどまらず、パスタ、トマト、ケチャップなど広がりを見せます。片岡さんの文章は何でこんなにかっこいいのだろう、と思わされることがよくあります。小説よりもエッセイが特に。2012/08/24