内容説明
細菌と宿主がおりなす仁義なき共生ワールド。
目次
第1章 仁義なき内部共生の世界
第2章 共生細菌の研究をはじめて
第3章 研究結果が得られたら
第4章 性転換するチョウ
第5章 細菌死が引き起こす宿主奇形
第6章 オスでもメスでもない個体の細胞内
第7章 研究を自分の中でどう捉えるか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
22
「ファインディング・ニモ」で知られるようになったイソギンチャクとクマノミの共生。生物が互いに協力し合いながら懸命に生きる姿はマスメディアの印象操作で、美しいものとされるが、実はそうではない。キチョウという蝶に寄生するある細菌は、自らを伝播させるために、宿主やその子孫の性を転換したり、子孫のオスを殺したりと荒技を行う。気が遠くなる程の長い時間にこれが繰り返されるとキチョウは別種のキタチョウに分化する。これらの蝶の分布を追うと、一千万年ぐらい前には日本列島、南西諸島、中国大陸は陸続きだったらしいことがわかる。2017/12/07
いきもの
5
共生細菌について著者の研究テーマであるキチョウとボルバキアの性操作について的を絞った話なのでタイトルから期待して昆虫と共生細菌全体の話を期待すると残念な感じだが、いろいろと研究の過程が垣間見れて面白い。まぁ、躁鬱っぽい愚痴は、まぁ、頑張ってくださいとしか。2015/11/27
sonettch
4
「役に立つ研究」よりも「役に立たない研究」の方が自らの知的好奇心に忠実で純粋だし、面白いと思う。そもそも人類自体、地球にとっては何の役にも立たない。2013/03/16
ながさか
3
著者の研究テーマである共生細菌による性転換についてがメインではあるが、著者が研究の世界へ足を踏み入れることになった話など、研究周辺の話も結構多く、生身の研究者の本音がかいま見えたような気もする。性転換の話も興味深かったが、第七章のサイエンスとテクノロジーの違いなどの話は、ここだけ読んでもおもしろいと思う。ところで著者は自身についてかなり謙遜してるけど、やっぱり元が優秀な人なんじゃないのかなあ。本人無自覚なだけで。2015/09/19
inugamix
3
共生細菌スゲー!オモシレー!の前に。これは特に学究の天賦の才も他を圧する知識もなく進学の動機が「彼氏と同じ大学v」とかであっても、疑問を持ち理解するって楽しいと思う心さえあれば、最初から有望なテーマにゆきあたり発表の機会と地位の保証と周囲の支援に恵まれて研究への愛着も熱意も生まれ、こんなふうに本も出せてしまうことがあるのだと、そういう点で進路に悩む高校生にお薦めしたいと思います。一般的な用語から成る専門的熟語の定義がひどい後出しなのはちょっと註が欲しかった。研究内容は掛け値なしの面白さ。2012/11/09