出版社内容情報
《訳者あとがき》より
『復活』については、古来さまざまの人がさまざまの感想をのべ、さまざまの解釈なり評価なりを下しているが、中には全然読みもしないで、“カチューシャ可愛や”の歌や『復活』の映画などから、それが一篇のメロドラマと勘違いしている筋もあると思う。……勿論『復活』はいろんな問題をその中に含んであるが、この私にして、もし《『復活』の中でトルストイが心をこめて訴えているものを一言にして述べよ》と言われたら、それは《人には人を裁く権利はない》ということを訴えているのだと答えたい。……トルストイにとって、凡そ聖戦なるものが絶対に存在しないこと、換言すれば《善き人殺し》や、《善き人殺しの準備》や、《善き人殺しの道具》などと言うのは、彼にとって《乾いた水》と言うが如き名辞矛盾であることをも『復活』がこれを証している……。(一九七九年十一月)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
25
最後の数ページで呆然。この物語は主役二人の愛と魂の成長を描いたものだと思って読んでいたが、作者の真の狙いは別のところにあった。ロシア司法制度のデタラメさや、囚人に対する非人道的な取り扱い。「誰を罰して誰を許すかということは神様のなさること」と司法制度自体を否定し、聖書に従って人を許すことを説く。土地私有の否定と併せ“無政府主義的な共産主義”と“教会を否定したキリスト教”が渾然となった作者の思想を、読み手に伝えたかったのだ。恋愛モノの姿を借りた社会派ドラマ、そして真の姿は伝道の書、というのが現時点での感想。2017/12/31
松本直哉
23
戦争と平和の中でピエールが、部外者なのに戦場の真只中に飛び込むのと同様に、ここでは主人公が、罪人でもないのに徒刑囚に同道してシベリアまで行く。そこで見聞した監獄の非人道性、劣悪な環境での囚人たちの衰弱、無罪なのに拘留される理不尽から、人が人を裁くことへの根源的な懐疑、さらには裁判制度と土地私有を維持する国家と教会への激烈な批判、体制に反抗する革命家への共感は、差し迫るロシア革命を予言しているとさえ言える。しかし結局は傍観者に過ぎず、久しぶりにありついた美食に人心地がつくあたりは、自らの限界を正直に明かす。2024/12/27
笑い男
2
マースロアのニュフリュードフに対する献身に目頭が熱くなる事が多々ありました。主人公のせいで彼女は一度は娼婦までなりがっても、それまで生きてきた環境により善の心を保つことができたんですね…愛するというのは、ただ単に一緒にいたり、結婚する事ではない…相手の事を思いやり…真の意味で自分の気持ちを犠牲にしてでも相手の幸せ願う事…自分の人生を台無しした相手であってもその相手の幸せの為に自分の気持ちを抑え、身を引く…そんなことが出来る女性がいったいこの現代にいるでしょうか…きっと昔は本当にいたんだろうなぁ…2011/02/19
Oki
0
中国語の先生が「一番影響を受けた本」というので読んでみた本。 どの部分に影響を受けたのかはよくわからない。 ・men for othersのところか? ・一切のものと和解せよ...というところか? しかし、悟れてない私としては、ニェフリュードフの言う 「現代のロシアで、廉潔な人にふさわしい唯一の住所は監獄だ。」 というロシアからミサイルを打ち込まれて、我が子を殺された人に 「右の頬を打たれたら左の頬も」...とはちょっと言えない。 2022/11/24