出版社内容情報
公開から半世紀を経た今も人気の映画「砂の器」。松本清張原作を大胆に映像化した脚本・監督・音楽家による仕掛けとは? 初公開秘蔵資料をもとに秘密に迫る!
内容説明
観客はなぜ感動したのか?公開から50年、監督秘蔵資料で新事実が明らかに!映画人の執念が生んだ宿命の映画、その製作の謎に迫る!
目次
序章 『砂の器』とはなんだったのか
第一章 『砂の器』の脚本と演出
第二章 『砂の器』の音楽
第三章 『砂の器』の演技
第四章 『砂の器』の宣伝・興行
第五章 『砂の器』の影響
補章 松本清張映画全作品論
終章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
128
映画『砂の器』で橋本忍の脚本が話題になるのは、単純な映画化では退屈になりかねない原作を見事に料理したためだ。しかし野村芳太郎監督がこの映画にかけた情熱あればこそ、今なお語られる名作が誕生したのだ。緻密なコンテから映像と音楽が巧妙にシンクロし、親子の悲劇的な宿命を盛り上げるドラマが計算されていたとわかる。有名なポスターも偶然撮られた写真を使い、主題曲の作曲は芥川也寸志夫人が大学の同期生を推薦し、予想外のヒットで松竹幹部がクビになるなどのトリビアも発掘している。こんな裏があったと知って観直すと一層面白いかも。2025/04/09
keroppi
61
大変読み応えのある一冊だった。決して名作ではない松本清張の原作を大胆に脚色した橋本忍。それでも論理的破綻のあるシナリオをドキュメントタッチと情緒、感性で押し切った腕力とも言える野村芳太郎の演出。音楽や子役に至るまで徹底した取材でこの映画が何だったのかを解き明かしていく。取り上げられた資料も膨大である。初公開時、私もこの映画に引き込まれ涙してしまった。映画の持つ魔性は、完全であることではなく、それすらも乗り越えて感動を呼ぶものを創り上げていく情熱であり、それが広く人の心に染み渡っていくことなのかもしれない。2025/05/19
ヒデキ
35
樋口尚文先生による「砂の器」の作品論 野村監督の膨大な資料と関係者へのインタビューから構成されています 初見のコンテや原作から脚本そして映画への転換の流れが、映画作りの楽しさと苦難を伝えてくれます。 先生の論を読んでいると作品を作るために沢山の矛盾と妥協があったことも伝わってしまいました 改めて映画を見てしまいました。 2025/03/16
ぐうぐう
30
労作だ。映画『砂の器』は、松本清張の原作を大胆にアレンジした橋本忍の脚本の功績だけが取り上げられることが多いのだが、樋口尚文はその脚本はもとより、監督を務めた野村芳太郎の演出、映画内で重要な存在感を示す音楽、記憶に残る子役・春田和秀らへのインタビューによる演技、さらには宣伝・興行、そして中国映画界や新世代への今日的影響まで、実に幅広く考察することで、より深い『砂の器』論を展開させてゆく。樋口は「清張作品のなかでは問題点も多い長大な原作を、(つづく)2025/03/28
マカロニ マカロン
14
個人の感想です:B+。来月の『祈りの幕が下りる時』読書散歩参考本として読んだ。映画は何度か見たが原作を読んだことがなくて、2月に原作を読み、橋本忍さん、山田洋次さんの共同脚本がいかにうまく原作を改編したものだったかを感じたが、本書で野村監督も含めて奇跡的な化学反応が起きていたことを再認識した。74年10/19公開の前月に北海道で追加ロケをして、再編集してそこに『宿命』のピアノ協奏曲を合わせたというのは神業の域。原作が讀賣夕刊に連載中に橋本さんが映画化を企画したが、松竹の会長の反対で頓挫した話も興味深い2025/05/21
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- 和書
- ていだん 中公文庫