出版社内容情報
大胆なデザイン性、多様な要素を一つ画面に納める構成力、日本独自の美意識を明らかにし、この感性がいかに中国や西洋の文化を受け入れたかを詳らかにする。
内容説明
大胆に切り捨てる一方、多様な要素を隔てなく取りこむ…それは、私たちの感性にも通じるから。センス・オブ・ニッポンの本質を日本美術に検証する。
目次
1 言葉とイメージ―日本人の美意識(『古今和歌集』序文に見る日本人の美意識;勅撰和歌集の意義;図と文字が越境する ほか)
2 日本の美と西洋の美(東と西の出会い―日本および西洋の絵画における表現様式についての諸問題;和製油画論;感性と情念―「和製油画」に支えたもの ほか)
3 日本人の美意識はどこから来るか(絵と文字;漢字と日本語;襲名の文化 ほか)
著者等紹介
高階秀爾[タカシナシュウジ]
1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954‐59年にフランス政府招聘留学生として渡仏。東京大学教授、国立西洋美術館館長を経て、現在は倉敷の大原美術館館長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術についての造詣もたいへん深く、『ルネッサンスの光と闇』(芸術選奨文部大臣賞)などの多くの著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mura_海竜
106
3章立て。第1章「日本人の美意識」は講演の内容。第2章「日本の美と西洋の美」ヨーロッパと日本の美術品を比べ日本のものの見方・考え方が表現されている。第3章「日本人の美意識はどこから来るか」で本章が一番読み応えがあった。文字・和歌・絵画・音楽にとどまらず、鉄道やロボットまで。大変固有名詞が多く難儀しましたが、参考写真等が多く理解が進んだ。寺社建築などの「屋根のそり」、音のないものを音で表す、日本画は主題以外は表現しない「切り捨ての美学」、余白が多い、余計なものを拒否する美意識、「留守模様」。2020/01/25
nobi
76
情より理の人という高階秀爾氏のイメージが、この本を読んで変わった。日本人の美しさへの感性を熱く語る。それも誰もが気づかなかったであろう切り口でその本質に迫る。例えば、絵と文字は別の領域とする西洋と、絵に文字を重ね合わせてしまう日本。ひらがなの姿と屋根の反りとの共通性、二義的なものを排除する美学、イタリアの労働者のロボットへの心理的抵抗と愛称を与えてしまう日本、季節の粧いをこらした日本の絵葉書…。蕪村の辞世の句を書き留めた呉春の白梅の図に託す想い、能の羽衣に魅せられた仏の女性舞踏家の最後の舞、等泣ける話も。2021/08/17
katsubek
30
何というか、久々の大興奮というやつである。東西の比較がこれほどすっきり読めるなんて、本当に幸せを感じずにはいられない。見たことのある絵が、ああ、そういう意味合いがあったかと、改めて感心させられる。あるいは、東京駅の持つ役割を、初めて得心させられる。筆者の明解な筆致は、読んでいて、まことに快い。同じことが別の箇所で出てくるのは、評論集である故、いたし方のないところ。されど、そんなことを差し引いても、十分以上にエキサイティングな書であった。是非とも、ご一読あれ。2016/09/03
№9
25
これは名著、ですね。美術史家の著者の慧眼が解き放つ日本人にとっての美の本質が、柔らかい親しみのある筆致で解き明かしていってくれます。それはまさに日本人の心の琴線に触れるものであり、著者の言葉に共感できない日本人はいないのではと思わせます。また音楽ファンの自分には「受け入れられなかった雅楽」と「唱歌と音楽教育」の二つの章があることが嬉しく、興味深いそのテーマにさらに関連する書物を読んでみたいと思わせるものでした。他の章も興味深いトピックばかりで美術ファンならずともページをめくる手が止まらない一冊でしょう。2016/05/26
風に吹かれて
23
日本の五重の塔や寺などの屋根の「反り」、日本刀の「反り」、同じ感覚の平仮名の曲線。 大聖堂は建物の中に神の世界があるがいつでも入れる日本の鳥居は自然を含めた鳥居の向こう全体が神の世界。俵屋宗達の画を下絵に本阿弥光悦は文字を書いた。筆を使って図も文字も一つの世界として表現された。平仮名となれば古今和歌集の世界も知らなければならない。 「古池や蛙飛び込む水の音」の「蛙」は単数形か複数形か欧米人にとっては大きな問題だが、どのような句を続けるか解釈次第だと日本人は考える。状況の美の日本と絶対の美の西洋。➡2021/03/22