内容説明
小津安二郎、溝口健二、黒沢明との比較においてではなく、世界的な視線のもとに、寡黙な表情の向こうに拡がる豊かな作品世界を多角的に論じる力作論考、身近に仕事をともにしたスタッフ、キャストのインタヴュー、成瀬に親愛を感じてきた映画監督たちのエッセイを収録する。
目次
二〇〇五年の成瀬巳喜男―序にかえて(蓮実重彦)
視線と空間の劇―成瀬巳喜男の戦中について(山根貞男)
寡黙なるものの雄弁―戦後の成瀬巳喜男(蓮実重彦)
成瀬について(ジャン・ドゥーシェ)
成瀬巳喜男におけるさまざまな移動―日本を縦断して(ベルナール・エイゼンシッツ)
シネマの中にいる他人―最後から三番目の成瀬巳喜男(藤井仁子)
紗が降りる―成瀬巳喜男の中心(常石史子)
ニューヨークのキミコ(大久保清朗)
…成瀬さんは、とても剽軽な方だなと思いました(岡田茉莉子)
成瀬さんの本領は、一歩歩いて振り返る、独特の振り返りのポジションですね(玉井正夫)〔ほか〕
著者等紹介
蓮実重彦[ハスミシゲヒコ]
1936年、東京に生れる。映画評論家
山根貞男[ヤマネサダオ]
1939年、大阪に生れる。映画評論家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
10
1930年代の成瀬への批評の変化(絶賛から『雪崩』における総スカンへ)を記した常石史子「紗が降りるーー成瀬巳喜男の中心」、『妻や薔薇のように』の1937年のニューヨーク公開の顛末と批評を追いつつジョン•フォードとの奇妙な繋がりを語った『ニューヨークのキミコ』が興味深い。蓮實重彦は、男と女と光と影に切り詰められる点で、例外的と言われる『浮雲』に徹底した連続性を見出す。50年代のキャメラマン、玉井正夫のインタビューが面白いと思ってたら『リュミエール』で読んだやつだった。2024/07/11
GO-FEET
4
以下、楊德昌(エドワード・ヤン)の「さりげない優しさという強靭で不可視のスタイル――成瀬巳喜男について」より引用。 《百年というみじかい映画の歴史において、偉大な映画作家たちが獲得したようなスタイルに匹敵するものが、成瀬にはない。 (中略) 成瀬は、黒澤のカンヌやヴェニスでの成功や、小津の持つ禅のような静かで単調な魅力について交わされる議論や賞賛のなかにあってなお寡黙であった。彼は、『浮雲』、『女が階段を上る時』 、『乱れる』といった静かな物語を静かに語った。》2024/03/14
fonfon
3
読み応えある貴重な書物。ハスミンの回りくどさのみに不満を感じるが。。エドワードヤン〈楊徳昌)の言うGenerosity:the invincible invisible styleはおそらく成瀬監督の本質を言いあてたものだと思うが、generosityをここで「さりげない優しさ」と訳してよいものか、たいへんに疑問です。「映画は人情と義理で撮るものだ」といったのは侯孝賢だけど、成瀬監督はおそらく違うでしょう。もっと映画をみてから考えます。2011/02/17
fritzng4
2
再読。発行された20年前に蓮實御大の講演会で買ってサインももらっていた。様々な論考があって読み応えがあるが、特に50年代キャリア最盛期に止まらず戦前戦中の作品もしっかり評価しようという成瀬再評価ムーブメントの波動を感じる一冊。巻末のフィルモグラフィもありがたく、成瀬ファンなら一家に一冊置いておきたい本です。2025/03/22




