出版社内容情報
「私の愛するいとこは、なぜ殺されなければならなかったのか?」米国で大きな反響を呼んだ、高名な政治学者による喪失と沈黙をめぐる回想録。解説 榎本空
内容説明
私の愛するいとこは、なぜ殺されなければならなかったのか?2007年、マイケル・Aはロサンジェルスの路上で射殺遺体となって発見された。いとこの死について調べるうちに著者は、自分の知らないマイケルに出会う。高名な政治学者による、黒人差別の実態を伝える回想録。
目次
1 釈放と復帰(ガーデン・パーティー 二〇〇九年七月;仮釈放の日 二〇〇六年六月;捜査その一 二〇〇九年七月 ほか)
2 地獄(罪と罰;家族はどこ?弁護士はどこにいた?;人生の節目 ほか)
3 許しなき社会(火と氷;シングルマザーとしての出発;初めての歩み ほか)
著者等紹介
アレン,ダニエル[アレン,ダニエル] [Allen,Danielle]
政治学者。ハーバード大学教授。古代ギリシアと現代アメリカにおける司法と市民権、政治思想に関する著名な研究者。同大学エドモンド・J・サフラ倫理センター所長として、さまざまな分野の専門家を率いて政策提言もおこなっている。多くの学術賞にも輝く
那波かおり[ナワカオリ]
翻訳家。上智大学文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
27
答えを出すのは簡単だ。死んだのなら、自然死か、他殺か、自殺か。他殺なら加害者がいる。加害者がいたから殺されたのだ。しかしこの問いかけをした著者の求めている答えは、それではない。「マイケル・A」のAは、アレンである。著者ダニエル・アレンの年下の従弟にあたる。青年期のほとんどを刑務所で過ごし、いわゆる娑婆に出てきたのはほんのわずかだった。父親とマイケルの母親カレンは兄妹なのに、なぜこれほど従兄どうしで違った人生を歩むことになったのか。2022/07/18
Erinelly
3
駅の書店にふらっと入ってふと目に入って、買わずにはいられなくなった一冊。ノンフィクションかつ重いトピックだったから読むのが怖かったけど、結果的に読んでてよかった。 ギャングや「その手の輩」と関わることによって最終的に殺害された青年の親族によって書かれた本なので、痛みや苦しみを感じさせる反面、著者が学者であるため、客観的に書かれていて「何がどうして起こった」が非常に分かりやすかった。ギャングやレイシャルプロファイリング、犯罪の厳罰化など、存在は知っているけど詳しくは知らなかった事についても学べる良書だった。2022/07/22
だちょう
0
筆者のいとこは射殺されて死んだ。15歳でカージャック未遂、余罪があったとされて26まで刑務所暮らし。仮釈放されたが29歳で死亡。未成年にしては罪が重すぎるが、カージャックって?と思っていたが、読み進めるとギャングが当たり前のように子供たちの中にはびこる、いとこのおかれた環境の過酷さが浮き彫りになっていく。同じ黒人の筆者が、研究者の父と司書の母を持ち、プリンストン大に行き、ギリシャ古典を学んで大学で教授になったのとあまりにも対照的。いとこの書く文章が非常に明晰で、環境が違えばどうなっていたのだろうと感じた。2024/04/06
かおるん
0
アメリカで相次いだ黒人射殺事件。それが家族だったなら―― 2007年、マイケル・Aはロサンジェルスの路上で射殺遺体となって発見された。いとこの死について調べるうちに著者は、自分の知らないマイケルに出会う。高名な政治学者による、喪失と沈黙をめぐる回想録。 ルポでもあり、エッセイでもあり、ミステリでもある不思議な読み心地が、著者の喪失と読者を結び付ける2023/05/31