内容説明
生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、沖縄の若者。その出会いを原点に、沖縄での調査は始まった。生きていくために建設業や性風俗業、ヤミ仕事に就いた若者たち。10年以上にわたって、かれらとつき合ってきた社会学者の、かつてない記録の誕生!
目次
第1章 暴走族少年らとの出会い(広島から沖縄へ;拓哉との出会い ほか)
第2章 地元の建設会社(裕太たちとの出会い;沖組という建設会社 ほか)
第3章 性風俗店を経営する(セクキャバ「ルアン」と真奈;「何してでも、自分で稼げよ」―洋介の生活史 ほか)
第4章 地元を見切る(地元を見切って内地へ―勝也の生活史;鳶になる ほか)
第5章 アジトの仲間、そして家族(家出からアジトへ―良夫の生活史;「自分、親いないんっすよ」―良哉の生活史 ほか)
著者等紹介
打越正行[ウチコシマサユキ]
1979年生まれ。社会学者。2016年、首都大学東京人文科学研究科にて博士号(社会学)を取得。現在、特定非営利活動法人社会理論・動態研究所研究員、沖縄国際大学南島文化研究所研究支援助手ならびに琉球大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
73
沖縄でヤンキーと呼ばれる少年たちのパシリ(使い走り)となり、彼らと一緒に過ごして参与観察した10年間の記録。学校に行かずに仲間とつるんで走り回る暴走族、先輩と後輩(しーじゃとうっとぅ)の狭い世界で暴力に支配されて生きる若者たち、その後は沖縄のムラ社会で建設業の従業員、風俗店や金融屋などで仕事をしギャブルに狂ったりキャバクラ通い、ヤク中にヤクザからみ、ダメ男とダメ女ばっかり出てくる。そのヤンキーの語りを、ダラダラと事象を紹介するだけ。彼らが生まれる素地はどこにあるのか、それは沖縄という土地柄なのか、ムラ社会2020/01/23
パトラッシュ
57
父親の転勤で全国を引っ越してきた自分には、地縁血縁で地元に縛り付けられるという感覚が理解できない。より良い仕事と収入が得られるのなら、嫌な奴から逃げるのなら、今住んでる土地でなくてもかまわない。そうした自分とは違って「地元から離れられない」者が、高等教育を受ける意欲をなくすほどの閉塞感から抜け出そうともがいてヤンキーとなっていく生態がなまなましい。マスコミや学者は「地元に根付いた人こそ」という意見をよく主張するが、世界の情報を瞬時に知ることのできるネット時代に「地元から出るな」と要求するのが無茶なのだ。2019/05/24
あやの
54
若者のこういう状況は沖縄に限ったことではないと思うが、他県に出づらいことや歴史的な事情もあって、沖縄はいわゆる下層社会のパーセンテージが大きいのかなと思った。気づくのはいい大人になっても地元の「先輩・後輩」の関係が彼らの絶対的な価値基準だということだ。しかもその関係も暴力による服従だったり、信頼関係があるとは言えない。そしてそこには、責任を持って彼らの生活や自我を支えてくれる「大人」の存在がない。彼らの子供たちも既に十代に差し掛かるだろう。また連鎖が続いていくことを思うと、憂鬱になる。2020/10/25
キク
52
ブルーハーツの青空に「生まれた所や皮膚や目の色で僕の何がわかるというのだろう」という歌詞がある。「偏見を持つor 持たない」ではなく、「わかるorわからない」で考えたら、わかる部分もある。沖縄の特殊な状況にもがく若者たちを読みながら、アフガンのニュース映像を思い出した。飛行機に乗り込む米兵に自分の赤ん坊だけを無理矢理預けることに成功した母親。アフガンで自分と育つより、米国で孤児難民になった方がいいと咄嗟に考えたのだろう。預けることに成功した母親の表情は後ろ向きで見えず、辛そうな米兵の表情だけが映っていた。2021/09/19
いちろく
45
参与観察をメインの調査方法とする社会学者(原文まま)である著者が、沖縄の若者達を対象とし調査したルポルタージュ。全てでなく限られた一部の状況である事を前提とした上でも、フィールドワークかつ客観視を大切にして、ありのままを伝えようとしているのがよく伝わる。外部の情報が気軽に手に入る今の世の中でも、その土地に縛られる、という境遇が今の若者達の中にもある点が、特に印象に残った。2019/06/22