出版社内容情報
原題は「ヒストリア(歴史)」で、紀元六九年から七〇年にかけての歴史である(タキトゥスは五六年生まれ)。本来はもっと長いものであったが、現在はこの部分しか残っていない。第五巻では、ユダヤ(本書ではユダエア)の内乱とエルサレム陥落(それ以後はユダヤ人は国を失い、二十世紀まで流浪の民となる)直前の様子が描かれている.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』131頁、より)
内容説明
悪名高き暴帝ネロ自殺のあと、すさまじい政争を描くローマ古典の本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケニオミ
11
皇帝ネロが倒れて、ウェスパシアヌスが皇帝となるまでのローマの内乱の歴史を描いた一級の歴史書だと思います。ローマの格言「訓練とは血を流さない実戦であり、実戦とは血を流す訓練である」を知っていたので、ローマ軍は将軍から歩兵に至るまで一糸乱れぬ姿で戦争に臨むイメージを持っていました。しかし、それが誤りであることが、本書でよく分かりました。人は欲望と恐慌で動き、臆病風に吹かれて思考停止してしまうんですね。人間の性を本当によく表した歴史書でした。ただ、登場人物が多くて、もう誰が誰だか分からくなるのが難点でした。2016/02/11
サアベドラ
2
ユリウス・クラウディウス朝断絶後、ウェスパシアヌスが皇帝になるまでの内乱史。まあマニアックですがカエサルの内乱記やタキトゥスの年代記を読めた人なら楽しめるはず。日本語でもタキトゥスの筆の巧みさがよくわかる。ただし絶版なんですよね。惜しい。追記:学芸文庫で復刊されたようです。2008/09/21
Doederleinia berycoides
0
政治的混乱の中での政治家達・軍人達の駆け引きが熱く、見応えがある。タキトゥスの人物描写はやはり見事で、紀元69年、70年の人々の行動が活き活きとしている。内戦だけでなく、元老院での議論の様子や、ゲルマニアやユダヤでの叛乱の様子も描かれている。失われた部分が残っていたら、もっと楽しめたろうと思われ残念。2011/08/06
Βουλγαροκτόνος
0
タキトゥスが最も力を入れて書いた暴君ドミティアヌスの部分は失われてしまったが、十分な読み応え。内乱がメインということで、かなり血腥い感じがする。また、白旗の使用や死海の記述など、文化的にも興味深い記述が多い。しかし、似たような名前の人物が大量に出てくるので、読むのは非常に難儀する。加えて、詳しい記述のせいで展開が遅いのが何とも。2022/08/26