内容説明
前世紀末の一知識人が書き残した精神病者の内的世界。フロイトが分析し、カネッティが霊感をうけ、ラカンの精神病論の基礎となった古典的ドキュメント。本邦初訳。
目次
枢密顧問官・教授フレヒジヒ博士への公開状
「回想録」のための補遺(奇跡に関して;神の知性の、人間の知性に対する関係について;人間遊戯に関して;幻覚に関して;神の本性に関して;将来に関する考察、雑録;火葬に関して)
付録(禁治産訴訟の審理からの公文書記録)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポカホンタス
6
勉強会で読んだ。シュレーバー博士の圧倒的な筆力に脱帽。ある種のアウトサイダーアート。このような書物が出版され現代まで読み継がれていること自体が奇蹟のように思われる。シュレーバー博士はこれを出版したいがために自身の禁治産の破棄を求め、またその草稿そのものが禁治産破棄を求めるための資料となり、そして裁判官のかなり甘い判断のもと、禁治産破棄が成立した。元同僚ということもあってか、シュレーバー博士の弁舌に裁判官自身がだまされた感もある。そういう意味で、この書物、魔力を持っている。2011/10/28
第9846号
4
勉強会で読みました。筆者自身の病の体験記です。自身の体験を意味付け、それを伝えようとする意思の強さが言葉の密度に結び付き、読む者を圧倒します。文章として精密なのに著されている内容が理解できない、という混沌とした状況にどれだけ耐えられるか、耐久レースを終えた様な読後感でした。2011/10/30