内容説明
経済の成長と共に次第に飢えは解消され、民主的諸権利は拡大された。社会の変革が、飢えと政治的暴圧に対する反抗としてのみ行なわれるものなら、その可能性は消えたように思われる。しかし、自分に関わる事柄を自分で決定すること、それを妨げることが疎外と呼ばれるものなら、疎外はむしろ著しく強化されている。その息苦しさを人びとは管理社会という。もっと自由な、意味のある生き方を求めるのは、ぜい沢なことか。そうでないとするなら、そういう生き方を可能とする社会は、どんな形で実現されるのか。現代社会を把握し、新しい思想と実践のあり方をさぐるカストリアディスの思想的営為を描く。
目次
1章 ロシアという試金石―あの抑圧社会はなぜか
2章 孤独な批判作業―虚像のマルクス経済学
3章 社会主義を問い直す―人びとの自治を原則に
4章 前衛は反民主的存在か―盟友との対決と別れ
5章 官僚社会の成立―変貌した現代資本主義
6章 マルクス主義との訣決―グループの分裂と解体
7章 新たな哲学的展開―現代社会の根底的批判へ