出版社内容情報
『失われた時を求めて』は、〈テクストの快楽〉にみちた小説でもある。〈紅茶とマドレーヌ〉などの名場面に光をあて、作品と人間の真実をエセー風に描く思索の書。
内容説明
20世紀最大の小説『失われた時を求めて』は、比類ない“読書の快楽”に彩られた文学作品でもある。有名な“紅茶とマドレーヌ”、“海と娘と薔薇”、“祖母の死”、“心情の間歇”など、圧倒的な感銘をよぶ名場面を読み解き、その魅力をエセー風に描き出す。
目次
1 雨上がりの森―序にかえて
2 水中花のように
3 音楽あるいは魂の交流―吉田秀和先生に
4 夜明けの停車場
5 海と娘と薔薇の茂み
6 オルフェウスの叫び
7 春の驟雨―井上究一郎先生に
8 死の舞踏―野田弘志に
著者等紹介
保苅瑞穂[ホカリミズホ]
1937年、東京生まれ。東京大学名誉教授。獨教大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
35
          
            面白いのはもちろんなのだけれど、私はこの本から凄味さえ感じた。マルセル・プルーストの小説に肉薄し、そこから哲学的な考察(それはプルースト自身が小説で展開したことでもあるし、保苅瑞穂自身の考察も含まれる)を繰り広げる。『失われた時を求めて』を読むこととは、単純にスジの面白さに酔うだけではなくそういった、思考が自壊するところまで突き詰めて考えることではないか。特に最後の、死をめぐって綴られるところが白眉で私自身の死生観も問い直されるように思われた。死は否応なく訪れるが、これだけの考察を残した彼は幸せだった、と2020/10/31
          
        壱萬参仟縁
6
          
            「かれが優れた批評家だったことはラスキン論やほかの批評作品を読めば明らか」(119頁)。また、「最愛の人というものは、その人への深い愛ゆえに、愛するものにとっては、その人がまだ生きているうちから、いつかはその人を失うかもしれないという思いゆえに悲しみの対象でもある」(179頁)。ここはなぜか引っかかる部分である。愛と憎しみは紙一重だが、愛と悲しみも同時に発現するものか。プルーストが一番愛した詩人は、ボードレール(189頁)。憶えておきたい。2013/04/23
          
        うた
6
          
            『モンテーニュ私記』がとても面白い本だったので、プルースト未読にも関わらず手に取ってしまいました(笑)。これもまた良書。『失われた時を求めて』の細部とその前後の関係をとりあげながら、プルーストの視点のきめ細かさや表現の巧みさ、配慮が行き届いた構造を解き明かしています。接吻や電話の箇所ではユーモラスに、祖母の死については自身の経験とすり合わせながら、じっくりと彼の書きぶりに寄り添う。今でている翻訳のなかでは井上先生のものが私にあいそうなので、いずれ全巻そろえて読み通していきたいと思います。2012/01/08
          
        Sumichika3
3
          
            最終章は、読み進むうちに、凄みを増していきます。喘息に苛まれたプルーストが自分に残された命の時間の刻々と迫る限界を自覚しつつ、入院を拒否して、草稿に加筆を続けたことは知られていますが、この小説に彼自身の精神的な境地を描き込んでいることが余すことなく論じられています。保刈先生自身が若い頃から読み続けてきた経験を通じて現在この文章を書いていることが感得される味わい深い本。
          
        Sherlock Holmis
2
          
            プルーストなど名前くらいしか知らなかったのに、図書館で偶然手に取り、ただパラパラと流し読みしたときの文章の香りに誘われて借りてきた。しかし、最後にはぜひ座右に置きたいとまで思えた。それは体裁の整った世の数多の文学入門と比べても、遥かに文学の本質へと肉薄しているように感ぜられた。2014/09/11
          
        - 
                
              
            - 和書
 
 - しばらくおまちください
 


              
              

