内容説明
フランスからモーリシャスに向かう船に寄港地で不法に乗り込んできた二人の男が、到着の直前に天然痘を発症、一行は目的地近くの島に足止めされる。40日にも及ぶ検疫隔離、薬品も食糧も不足し死が忍びよる極限状態を透明な文体で描く。冒頭から天才詩人ランボーが登場、 青い眼の強烈な耀きが、全篇に不思議な光彩を投げかける。
著者等紹介
ル・クレジオ,J.M.G.[ルクレジオ,J.M.G.] [Le Cl´ezio,Jean‐Marie Gustave]
1940年南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞。一躍時代の寵児となった。その後も話題作を次々に発表、インディオの文化・神話研究に挑むなど、文明の周縁に対する興味を深めてゆく。2008年、ノーベル文学賞受賞
中地義和[ナカジヨシカズ]
1952年和歌山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。専攻はフランス近代文学、とくに詩。パリ第三大学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けい
70
アフリカ大陸南東に位置するモーリシャス島、その北に位置するプラト島を舞台に、語り手の大叔父レオン(語り手もこの名だが)足跡をたどる物語。天然痘の発症により隔離された島プラト島、レオンと島の女性シュルヤとの日々を中心に人々の様子、出来事を淡々と語る物語。悲壮感漂うべき内容でありながら、何故かそれを感じない文章と舞台、そして不思議に爽やかな読後感、作者の文章の持ち味なのかな?2014/03/14
燃えつきた棒
40
物語の冒頭で、ランボーの粗暴な横顔が素描される。以後、何度も彼の眼差しが浮かんでは消える。/ 医師ジャックは、妻のシュザンヌと弟のレオン(レオン1:語り手であるレオン2の大叔父)を連れて、故郷のモーリシャス島を目指して出港する。 だが、密航者が天然痘を発病し、目的地を目前にして、乗客は隣のプラト島に下船させられてしまう。 そして、彼らはその「隔離の島」で長い時間を過ごすことになる。 そんな日々の中で、レオンは、プラト島で島の娘シュルヤと出逢い、魅せられていく。 2021/04/22
藤月はな(灯れ松明の火)
26
主人公(レオンⅡ)は植物を記録しながらもインド移民の女性と失踪した大叔父(レオンⅠ)の軌跡を辿っていくが・・・。天然痘の発生でモーリシャス近くのプラト島に隔離された男女の異文化交流。よく、考えてみれば植民地支配下という状況が覆されつつある時代で、病による死の匂いが濃厚な重い結末なのにすごく、清々しいのは紙面からも匂い立つような自然描写や潮風、鳥の鳴き声などが伝わって来るからなのかもしれません。2015/05/19
kiho
11
自然描写が素敵…人物関係が多少複雑ですが、心が揺れながらも島での恋に動いていくレオンの気持ちが島の自然の中に溶け込んでいく感じ☆隔離の島での極限状態の描写も引きつけられた♪2014/10/30
みみみんみみすてぃ
10
★★★★☆ 素晴らしいけど、長い(笑) クレジオの文章は本当に本当にだらだらしている。しかし、この作品は色々と良いところがあった。まず、章に別れていて、よく分からなかったけど「現在の僕」の話や回想と、その血族のレオンが隔離された島でシュルヤと出会って、一族と縁を切る決断をして、姿を永遠にくらますという話(「隔離」)とに分かれている。この「隔離」の章がもっとも長いわけだが、植物学者メルカトフの植物日記や、シュルヤの母や婆さんの物語や、文学者の詩など、様々なものが挿入されている。2016/04/29