内容説明
読んでびっくりの表題作をはじめ、男が女に、女が男になる「パントの国で」、16世紀のプラハに迷いこんだアリスの物語、ハリウッドに題材をとった「幻影の商人」など、伝説や物語を大胆に作り替える手法で死後ますます名声の高い“イギリスの妖精女王”カーターの遺作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
54
幻想的な9編から成る短編集。どれも不思議な感じのする話で面白かったが特に気に入ったのは『印象:マグダラのマリア』ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作『悔悟するマグダラのマリア』から受けた作者の印象が興味深くシュールで良かった。『リジーの虎』も個人的には好き。1892年に父親と継母を斧で殺害し後に無罪となったリジー・ボーデンの少女時代を題材としていてこれもまた、興味深い作品だった。2018/10/26
rinakko
2
野蛮で自由で残酷で、大好きです。ほど良く毒気を抜かれてお行儀よく整えられてしまう以前の昔話には、身も蓋もない先人の知恵や警鐘がこめられていたのだろうなぁ。人の営みあるところに潜む罠を、あばくように…。表題作の凄まじくも鮮やかな解釈には、慄然としつつそんなことを考えた。一方「プラハのアリス」は、とにかく楽しい♪ 全ての文章にくすくす…と笑ってしまうほど。2009/08/26
Нелли(ネリ)
1
童話や聖書や実在の人物などからモチーフを取った話の多い短篇集。日本で馴染みのあるモチーフが少ないのでぴんと来ない部分が多いがそれを差し引いてもむせ返るような生の匂いを発しながら自在に流動する物語は魅力的。なんか芸術作品としての春画を眺めているような気分にもなる2017/11/05
龍國竣/リュウゴク
0
作者の遺作を集めた一冊。既存の作品を翻案した小説が揃うが、今回は映画を基にしたものが多く、ジョン・フォード、ハンク・マン、さらにシュヴァンクマイエル『アリス』などを題材とする。女性を真摯に見つめた上で、エロティックに描く。2014/09/26