出版社内容情報
日本の敗戦から70年。戦争体験者が減るなかで、実際の戦場を体験した人々が、戦後社会をどう生き、悲惨な体験をどう伝えようとしたのか、その実像に迫る。
内容説明
この国の310万人余が死んだ。生きのびた人たちの痛みとは。40年間におよぶ聞取り・史料調査の集大成!40数年間に延べ4000人から聞取り調査を行なってきた昭和史の探究者が、戦後70年の節目に渾身の力を込めて!
目次
第1章 『きけわだつみのこえ』と戦後社会
第2章 日中戦争の実態を伝える
第3章 元戦犯たちの苦悩
第4章 軍隊と性の病理
第5章 衛生兵の見た南方戦線
第6章 個人が残した記録
補章 兵士の戦場体験をいかに聞くか
著者等紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
評論家・ノンフィクション作家。1939年札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業後、出版社勤務などを経て著述活動に入る。日本近現代史(とくに昭和史)の実証的研究、医学・医療の分野を検証する作品を発表している。2004年、個人誌『昭和史講座』の刊行で、第52回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころりんぱ
50
40年に渡り戦争体験を聴き続けた著者の真摯さがにじみ出ている本だと思った。政治の力が及ばない、歪みのない形で戦争の記憶を記録することはとても大切だと思う。戦争体験者がずっと胸に抱えてきた加害者としての記憶、証言を正しく聞き取り、しっかりと記録として残すこと、そして共有することは、次世代が戦争を起こさないようにする大きな手立てになると思う。この本で様々な立場の人の戦場での行動や思いに触れれば触れるほど、自分の胸の中に重たい石がひとつずつ積み重なっていくようだった。いろいろな人に読んでみてほしいと思った。2017/02/07
さくりや
16
なるべく左右いずれにも寄らないように書く。旧軍の残虐行為についてはあった・伝えられている程ではない・なかった等様々な意見を聞くが「あった」側の方の意見を詳細に読めた。「なかった」側の作品も読みたいところ。ただ残虐行為の原因を日本人・昭和陸海軍・戦争という要素に求めるのはちと強引だな。出来事に意味や要因を求めるのは結局都合良く記録を改竄する旧軍と変わらないと思う。今生きる我々が言えるのは、歴史は連累しており、精神や心理はその連累から逃れられないというだけじゃないかな。2019/12/02
majiro
12
すごく、おっかないと思った。こういう風に、人をおかしくしてしまうのかと思うと。2017/01/30
勝浩1958
9
興味本位ではなく、実際に日本の軍人はどんな残虐な行為をなしたのかを私たち後世の者は知っておく必要があるのではないかと思う。一部の為政者はどうしても残虐行為があったことを認めたがらないので、なおさら戦場体験者の証言や記録・手記は貴重である。著者が指摘しているのだが、様々な戦友会の実態を知ると、いまだに軍事行為の正当性を主張する者がいることに、信じられない思いをした。彼らが本当に反省しない限り、いつまでたっても真のアジア諸国との友好関係は築かれないと思う。2015/11/13
冬薔薇
6
40年にわたり4000人に聞き取った話を元に後世に伝えるべく残す「戦争の記憶と記録」。戦後世代はこれによって戦場擬似体験をし、その継承者となる。戦後の戦場体験のない将校達の記録は、自己保身の認識すらなくあの戦争を正当化する。前線の惨状、地獄を知らずに戦争を語る者達、それを信じる者は侵略も残虐行為もなかったと言う。「一人でも多くの敵を殺したものが英雄になる」という「非日常空間の恐怖を味わった」ものは戦後何十年経っても心の傷は癒えない。客観的な視点は軍医、衛生兵から得られる。今も各地で続く戦争、人間の本能か。2023/12/25