出版社内容情報
育てたい。愛したい。それだけの願いを叶えることが、こんなにも難しい――。一人として同じではない女性たちと著者自身の切なる声をたしかに聴き取る。
内容説明
「育てたい」「愛したい」それだけの願いを叶えることが、こんなにも難しい。注目連載待望の書籍化!一人として同じではない女性たちと、己自身の切なる声―自らも母としてあがくノンフィクション作家が聴き取り、綴る。
目次
母と生の狭間で
ほんとうのさいわい
人生に居座る
子を産む理由
風の中を走る
友ではない友
朝の希望
誰のせいでもない
生まれるかなしみ
海と胎動
ただ家族として
不完全な女たち
母の背中
死を選んだ母
何度でも新しい朝を
その花は散らない
花を踏みにじらないために
著者等紹介
河合香織[カワイカオリ]
1974年生まれ。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一ノンフィクション賞および新潮ドキュメント賞をW受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ショースケ
159
母とは、母性とは何か。この本ではいろんな母親が紹介されている。事故や事件で子を亡くした母親。障害を持つ子を産んだ母親。ママ友との人間関係で、ボロボロに傷つき自死を選んだ母親。同性のパートナーと共に子どもを育てる母親。彼女たちは、母という理想と現実とのギャップに苦しみ、社会からの視線に自らを呪縛している。不完全でもいい。これが親子の在り方だというものは存在しない。事件で亡くなった我が子の流した血を拭き取った母親の場面は涙した、私も息子がいる。自分の命より大事な息子のためなら喜んで死ねる。読後改めて強く思った2023/04/16
モルク
103
母と一言で言っても様々な母の形がある。そこに母とはこうあるべきという呪縛があるのも事実である。子供が小さい頃はこの子のために今は死ねないと思った。母を介護しているときは母を残して先に死ねないと思った。本書に出てくる母の中でもキャンプ場で行方不明になった美咲ちゃんのお母さんの話がずしんときた。あの時ほんのちょっと目を離さなければ、ついていってあげれば…いろんな後悔で心はズタズタなのに更に追い討ちをかけるネット民。だけど朝に希望を持つ姿、その決意に心奪われた。2023/07/01
fwhd8325
81
母という存在をこれほど強烈に感じたのは初めてかもしれません。母性という表現とも違う、まさに本能から起きてくるものなのかもしれません。山梨のキャンプ場で起きた美咲さんのお母さんの章は、事件も記憶にあっただけに、とても強く響きました。2023/10/11
どんぐり
79
妊娠によって命の危険にさらされる女性、ママ友の中で心を病んでしまった女性、児童失踪事件で社会からバッシングを受ける女性、難病の子を育てる女性、精子提供で子どもを産んだ女性、特別養子縁組で子をもった同性婚の人。さまざまな母親が登場する17のルポ。なかでも、池田小事件で娘をなくした母親の「もしも69歩目があるなら、どうか一緒に歩かせてください」と祈った〈生まれるかなしみ〉の一篇が、『母は死ねない』と深く心に響かせるものがあった。どれもこの著者ならでは読みごたえのある作品。2025/04/24
ゆみねこ
77
母であること、母に対しての理想と現実とのギャップ。様々な母を取り上げたドキュメントは、つい最近報道された事件事故の当事者も取り上げられていて読むのが苦しかった。「かくあるべき姿」に囚われる不幸、母もまたひとりの人間、理想と現実の間で悩みもがく母は私もまたそのひとり。河合香織さん、初読み。2023/04/16