出版社内容情報
代々「正」の字を名に継ぐ銭湯の男たち、大根のない町で大根の物語を考える人、解体する建物で発見された謎の手記……時間と人と場所を新しい感覚で描く物語集。
内容説明
人間と時間の不思議がここにある。作家生活20周年の新境地。この星のどこかにあった、誰も知らない33の物語。人生と時間を描く新感覚物語集。
著者等紹介
柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(04年に映画化)。07年『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、10年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(18年に映画化)、14年『春の庭』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
284
柴崎 友香、3作目は、著者作家生活20周年の超短編集でした。こんなに題名が長い作品集は初めてです。オススメは「アパート一階の住人は暮らし始めて二年経って毎日同じ時間に路地を通る猫に気がつき、行く先を追ってみると、猫が入っていった空き家は、住人が・・・」&「兄弟は仲がいいと言われて育ち、兄は勉強をするために街を出て、弟はギターを弾き始めて有名になり、兄は居酒屋のテレビで弟を見た」です。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/hyakunen_to_ichinichi/2020/11/15
ひこうき雲
159
ただ『淡淡』と時が進む。百年と1日のあいだ、特別なことは何も起きない。でも確かに生きている、そこに存在する。「人生ってそんなものだよね」と思う。2020/10/25
モルク
139
180ページ余りの中にある33の物語。独特の世界観の中にどっぷりつかる。様々な地方、いろいろな人に流れる時間、懐かしさ、不思議さに満たされた時を過ごした。思い出の地を再び訪れた時、建築物は変わり自らの記憶と照らし合わせながら懐かしさそしてちょっぴり失望を味わう。全て移り変わるものであり、自然、土地、建物そして人間も例外ではない。著者の描く世界に足を踏み入れるとその心地よさに浸ってしまう。2022/11/16
buchipanda3
132
掌篇集。こんな人の営みがあった、という風に様々な人たちの記憶が語られる。ある瞬間の情景が五感をくすぐるようにパッと浮かび上がったかと思えば、あっという間に10年、20年と時が流されていく。その振れ幅の大胆さに酔いしれた。よく考えてみれば自分もそういった一瞬の積み重ねとふつうに過ぎ去った長い年月で出来ているのだなと。そしてその間に変化しないものはほとんど無かったことに改めて気付く。もちろんそのままというのもある。そう思ったら何だか頭が柔らかくなったような。郷愁と無常が入り混じった不思議な読み心地を堪能した。2021/03/09
なゆ
122
こういう本、好き。“この星のどこかにあった、誰も知らない33の物語”とあるように、何処の誰ともわからない人たちの生活や人生のかけらが散りばめられている。異国らしき話もあれば、誰かと共有したささやかな記憶の行方だとか。短い話のなかで時間も場所もひょいひょい飛び越えて、変わるものあれば変わらないものもあって。定点観察みたいな話が好き。町のラーメン屋、猫の通り道、古びた喫茶店、etc…。感情は最小限に淡々としているけれど、それぞれの話に思うところは残りそれが降り積もって、本を閉じるころには芳醇な読後感に〜♪2020/08/19