出版社内容情報
「俺は世界を戦慄せしめているか?」少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。一人の天才を巡る四つのspring。構想10年、待望のダンサー小説!
内容説明
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。構想、執筆10年、待望のバレエ小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
162
HALは天才バレエダンサーであると同時に、周囲を惹きつけてやまない巨大な光源であり鏡だった。誰もが振り返る輝きを放つ彼に、最高の姿で映りたいと願ってやまない。だからダンサーは自分を最高に表現する形として彼に振付を頼むが、己も知らなかった新たな側面を映されて戦慄してしまうのだ。HALに接した平地の民は、彼が天高く舞い上がるのに引きずられて才能を飛翔させていく。芸術家の孤独が描かれた従来型とは逆に、バレエという共通言語を持つ狭い世界故に成立する、集団としての芸術家の成長を主題とした新たな教養小説となっている。2024/04/23
のぶ
92
「チョコレートコスモス」「蜜蜂と遠雷」の系列の作品だと聞いていたので、期待して読んだが満たされた。目で見て耳で聞いて空気を感じて、体験する芸術的な体験をどうしてこうも美しく魅力的かつ奥深く「文章」に出来るのか。文章なんて言ってしまえばただの文字なのに、読み出せばそこには音楽や躍動と美しさが溢れる深淵なバレエの世界が広がっている。バレエの天才の物語という要素は存分に生かされているし、恩田さんの持つ文学、映画、音楽等の詳細な情報が存分に込められていて、その知識の深さを読むだけでも十分に満足させられた。2024/04/16
もぐもぐ
72
多分凄いんだろうなと思って読んだけど、想像超えて物凄かった。天才たちの饗宴に魅了されました。バレエの舞踏家としても振付家としても稀有な輝きを見せる春。HAL。ライバルと鎬を削るという張り詰めた雰囲気じゃなく、仲間たちと創造し世界を拡張していく景色、孤高なのに孤独じゃないというのがなんとも心地良かったです。本当に舞台を見てきたような不思議な余韻も気持ちいい。初版限定特典の掌編『反省と改善』は9/30までの公開。こちらもクスッと楽しい話でした。2024/03/23
ぼっちゃん
62
【202405ダ・ヴィンチのプラチナ本】『チョコレートコスモス』『蜜蜂と遠雷』と表現者を描いてこられた恩田さんが今回はバレエを描かれた作品。『蜜蜂と遠雷』の時にも思ったが、相当勉強してバレエの音楽、振り付けを理解して自分のものにしないと文章で表現できないと思うので本当に恩田さんは凄い!!。ただ前作2作品と比べ、この後どうなるのだろうと思うワクワク感は少なめだったかな。2024/03/24
PEN-F
51
本編については一切の文句の付けようがないほどの完璧な内容でした。それとは別に特筆すべき点が1つ。パラパラ漫画のクオリティーの高さが凄い!450ページほどの本編の左下隅に描かれているパラパラ漫画が凄すぎる。バレエダンサーの踊りを表現しているのですが、その描写が滑らかすぎて、何度も何度もパラパラパラパラしてしまいました。跳んだり跳ねたり回ったり、一連の動きを飽きもせずに繰り返してしまうくらいに癖になる。たとえ本編を読まなくともこのパラパラ漫画だけでも購入する価値がある一冊。2024/04/17