出版社内容情報
母に棄てられ、施設で育ったひかるは、ある日公園で自分と同じ名前の母親が落とした母子手帳を拾う。孤独と焦燥、そして再生の物語。第37回太宰治賞受賞作。
内容説明
幼い頃に母に棄てられ、施設で育ったひかる。ふとした瞬間甦るあやふやであたたかな記憶、そして手元に残された母子手帳が唯一の母とのつながりだった。ある日、公園のベンチで拾ったのは、自分と同じ名前、生年月日の母親が落とした母子手帳。他人とは思えないもう一人のひかるがどんな母親なのか見届けるため、ひとり待つ―。『birth』は第37回太宰治賞受賞作品。『彼女がなるべく遠くへ行けるように』は第34回太宰治賞最終候補作品を加筆修正。
著者等紹介
山家望[ヤマイエノゾミ]
1987年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。「birth」で第37回太宰治賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
72
太宰治賞受賞作は、とりあえず読みたい。2作とも肉親がいないという孤独と、愛されていた微かな記憶、そしてそれでも独り生きていくということ。表題作は児童養護施設で育てられたひかるにとって、母子手帳は2歳まで愛されていたという唯一の証の話。母子手帳に固執する気持ちはわからないでもないが、だんだん危うい方に?からの急展開で、そんな荒療治あるの?とか思いつつ、タイトルがストンと。分かったような分からないような、起伏があるようなないような、そういうのは好きだけど…。表紙の顔がボワボワした感じはピッタリだ。2022/08/07
日の丸タック
35
思慮深い人間…内省的・内向的傾向が強いのか…? 人は視覚で受け止め、一瞬のうちに限り無い数の思考を巡らせたり本能的な反応を示す事だろう。 しかし、その大半を…というかほぼ全ての事は意識に上る事もなく霧散している気がする。 自分を巡る全てのことに意識を向け、理路整然と並べ直していたら一歩も前には進めない。前に進む必要がない事柄でも疲労感は半端ない。 自分の行動や考え方、価値観を具体的に説明することが苦手で直感的に、刹那的に生きる人には理解の及ばない世界観なのだろうか?きっと無意識の世界では思考しているのか?2022/04/07
tellme
30
初読み作家さん。2編ともに肉親がいない主人公の話。生きるために必要なものやすがるものはみな違っているのは当然で、それを少しずつ知っていくことが生きるということなのか。私には難解でまだまだ読みこめていない。所々でセリフにどきりとさせられた。2022/12/05
rosetta
28
★★★☆☆37回太宰治賞受賞の表題作と34回同賞最終候補作の二篇の短編集。当然純文学に分類される小説なのだろうが割と楽しめた。それにしてもやっぱり純文学は根暗で精神の病んだ奴の小説だな笑。birth/2歳から施設で育ったひかるは残された母子手帳を唯一の繋がりと思い大切にしてきたが自分と同じ日に生まれた同じ名前の母親が落とした母子手帳を拾う。彼女がなるべく遠くへ行けるように/遠縁の老女と暮らしていた美大の講師の主人公が死んだ鼠の亡霊を見る。純文学の評価は出来ないけど候補作の方が好きだなぁ。2022/02/02
信兵衛
25
ごく日常の、数日を描いたストーリィです。 それを、主人公の内心を、とても丁寧に描いていく、その語り口に極めて好感。2022/01/10
-
- 電子書籍
- [ハレム]CHILDEATH 第1話 …