出版社内容情報
新三島賞作家が描く女子と野球の熱く切ない物語。空っ風吹くなか白球を追う女子たちの連帯と闘争。三島賞受賞作「無限の玄」を併録。新三島賞作家が鮮烈に放つ女子と野球の熱く切ない物語。空っ風吹きつける群馬の地で白球を追う女子たちの魂はスパークする! 三島賞受賞作「無限の玄」を併録。
古谷田 奈月[コヤタ ナツキ]
著・文・その他
内容説明
死んでは蘇る父に戸惑う男たち、魂の健康を賭けて野球する女たち。三島賞受賞作「無限の玄」と芥川賞候補作「風下の朱」を収めた超弩級の新星が放つ奇跡の中編集!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
93
まだ世界の何も知らない子供に楽器を与え、音楽を押し付けたのだ。本人の意志であるかのようで、無理強いしているのと同じ。男が家系や血を継ぐのは当たり前なのだからは、私がいちばん嫌いな思考だ。私の父は疎遠なまま逝ってしまったが、この親父は輪廻転生する(笑)。たまったもんじゃない。作者は家父長制を揶揄したのだろうか。思えば、家には仏間がありいつまでもいるかのようにお供えをし祈る習慣も呪縛かもしれない。叔父が警察に確認するとそれは安置所にあった。この父親がいなくなることで息子たちにも新しい選択ができたかもしれない。2022/09/28
なゆ
76
むむむと複雑な読後感。2つの話にはどこか似たような空気が漂う。何だろう。「無限の玄」は男ばかりの話。父(玄)と息子二人、叔父と従兄弟、合わせて5人のブルーグラスバンド“百弦”がツアーの合間に帰ってきた月夜野での奇妙な出来事。玄が死んだ…のに、なんだか陽気になって、コミカル?ホラー?どっち??と思ってたらどんどん重苦しい感じに。もう一つの「風下の朱」は野球部を作ろうとする女子大生の話で、女ばかりが出てくる。“私たちの正しさ”とは。男にとっての“血”、女にとっての“血”、という2つの話なんだろうか?2018/09/08
fwhd8325
71
ファンタジーの世界を描く作家さんと思っていましたから、この作品は、幅広い作家さんだという印象を持ちました。2作品とも、中短編程度のの作品ですが、少々疲れました。黒澤明が芥川の「藪の中」を「羅生門」としたように、二つの作品とも、想像力を大きく刺激する、小説で言えば、描かれていない行間を感じ取る作品のように思います。しかし、ぼんくらな私には、ちょっと難しい。降参です。2018/09/02
吉田あや
71
収録作に共通する、頑なな行動と相反する想い、求めても届かないことへの暴力的なまでの執着、「個」であるべきとする己と、「和」から抜け出すことの恐怖。人間の奥底にある願望と理想と本能は家族としての塊と、他人との塊の中でどう生まれ、生き、何を受け取り、何と訣別し、死んでいくか。集束し、散開し、「個」として生きてゆく。生と死の狭間で揺れる想いのその先は、いつだって自由で、どこまでも不自由な檻がある。男だけ、女だけ、の世界に隔て物語る不自然さからより鮮明にそれぞれの違いや歪さがくっきりと浮かび上がるのも面白かった。2018/07/16
Emperor
56
とても読みやすい文章と、角度のついた不思議なストーリー。このミスマッチさが、なんとも不穏な雰囲気を漂わせている。初読み作家さんなので、他の作品も読んでみたくなった。2018/09/16