出版社内容情報
地下室に引きこもる妻に「僕」はなんとか会おうとするのだが――。不安、官能、追憶、愛。夫婦間に横たわる光と闇を幻想的に描いた、第33回太宰治賞受賞作。
内容説明
朝、目を覚ますと、隣には誰もいなかった―妻が地下室に引きこもった。連絡手段はLINEだけ。その日から、妻ともう一度出会うための冒険が始まった。失われた絆、出会ったころの情熱、抑えつけていた傷口―何度でも出会いそこなう二人は、闇の中で不思議なセッションを始める。ゆがみとずれを抱えた夫婦の、奇妙な愛の物語。第33回太宰治賞受賞作。
著者等紹介
サクラ・ヒロ[サクラヒロ]
1979年、大阪府出身。立命館大学文学部卒業。「タンゴ・イン・ザ・ダーク」で、第33回太宰治賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
100
目を閉じて連れ合いの顔を思い浮かべてみた。良かった、ちゃんと見える。手を伸ばしても掴み損ねない。たったそれだけで安心する私は小心者でしょうかー形あるものしか、見えるものしか信じられないのは誰?暗闇のなかで音楽だけが確かなのかー先に読んだ乙一の『暗いところで待ち合わせ』の対極にあるような感じだ。破滅に向かう物語は嫌いじゃないが、これも『愛』なのか?私にはタンゴも聞こえない。双子の想定が邪魔をする。職場放棄にもオイオイって。現実的に考えてしまう私はつまらない人間なのかもしれないなぁ。2017/12/16
Comit
69
県立図書~結婚して3年、子どもなし、セックスレス1年…ふとした事から妻が地下室に閉じこもり、連絡はメールか携帯電話だけに…夫は2人が出会ったきっかけである音楽を通じて、妻との距離を縮めようとする。突飛な設定とミステリアスな展開、不穏に満ち、それでいて官能美と情動に溢れる描写。夫婦の問答はとても哲学的で、少しずつ真理に近付くにつれ、見えないように、なかったことにしようとしていた事実と向き合うことになる…全てを語らないぶん、読み手によって結末の印象が変わりそうな本でした。著者初読、太宰治賞受賞作。2021/04/29
おかむら
42
今年の太宰賞。30代夫婦の話。ある日突然地下室に閉じこもった妻。LINEでやりとりしてるうち、気づいたら妻の顔が思い出せない…。夫婦とは?記憶とは? あらすじだけだと辛気臭い感じになっちゃうけど、コレ面白かった! 出てくるタンゴの曲をYouTubeで探したくなり探しましたよ。おお! いい意味で春樹っぽい。あと、巻末にスピンオフ短編が載っててコレがまた楽しかったの! 次作も期待!2017/12/14
おさむ
37
天の岩戸伝説、春琴抄、オルフェウスの神話などのエピソードが奇妙に混じり合う。人間の記憶の危うさが読み進むにつれて浮き彫りになってきて、空想と現実の境目もあやふやになっていく世界。なるほど第33回太宰治賞だけある。2018/02/09
たいぱぱ
31
作者の名前とタイトルに惹かれて読んでみました。なんだか不思議な魅力があり、どうなるのか気になり、すいすいと読み進めてしまいます。が、これ村上春樹と類似点が多過ぎます。ちょっと文体換えた擬似春樹くんです(笑)。でもなぜだか、火野のキャラとこの本、そんなに嫌いじゃありません。2018/02/05