出版社内容情報
南相馬出身の作者が満を持して描く震災小説の決定版。避難指示区域で寝たきりの母親と暮らす男が秘匿された幼少時の記憶をたどる。
志賀 泉[シガ イズミ]
内容説明
避難区域に寝たきりの母と留まった「俺」が、誰一人いない町で封印された記憶をたどっていく表題作のほか、避難先の学校でフクシマの映画を作ることになる17歳の女子高校生を描く「私のいない椅子」を収録。南相馬出身の作家がはなつ、震災文学の決定版!
著者等紹介
志賀泉[シガイズミ]
1960年福島県南相馬市小高区生まれ。現在は休校中の県立双葉高等学校を経て、二松学舎大学を卒業。現在は知的障害者施設に勤務。2004年に「指の音楽」で第二十回太宰治賞を受賞。2011年3月11日の東日本大震災後、故郷が避難地区に指定され、映画製作やルポルタージュの執筆など被災地の現地報告活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あやの
41
自分の住んでいた町に対する想いは他の誰にも侵されたくない。震災と原発事故で人生が変わってしまった人たちの物語2編。表題作は警戒区域内に留まった「俺」の回想とこれから。「私のいない椅子」は避難先の高校で震災映画を作ることになった女子高生の心情。どちらも切なく苦しい。故郷を大切に思うのは誰でも一緒なのに、震災があってから特別視されるようになってしまった気がする。そんな心の痛みが伝わる。2019/06/27
おかだ
37
戦争文学と同じように、震災文学が存在する。文学という形で残し、後世に語り継ぎ、あの痛みを教訓を忘れない為に。まだ癒えずジュクジュクと膿んだままの傷に多くの人が触れなければいけない、直視しなければならないのだという事を、痛切に感じた。地震・津波もだが、それに輪をかけて原発事故という打撃は土地を人々の心を未来を蝕み続けている。何も終わってなどいないという叫びと、それでも日々は続いていくのだという現実が記されている。2017/04/27
百太
28
震災本の中で、読んでよかったと思った作品です。2018/03/12
かおりん
19
「無情の神がー」震災で避難区域に母と留まる中年男性。近所の医院に引っ越してきた美鈴との30年前の交流や出来事が哀しい。無気力で荒廃的な男は震災にあったからこそかもしれない。猫の保護活動をしている怜子もまた秘密を抱えていた。「私のいない椅子」フクシマの映画を作ることになった女子高生。映画に賛同できなくなり主役をおりる。小熊の言葉が刺さる。やりたいこと、やるべきことは山のように目の前に現れる。本当に実現できることは、そのなかのほんのひとつやふたつなんだ。福島県南相馬出身の著者だからリアリティと重みがある。2017/10/28
tan
19
YA向きですが、震災が基本なので重く、どちらかと言えば高校生向けかな。2編とも母との関係が綴られていて「家族とは何だろう」という大きなテーマでもあったような気がします。本としては薄くてすぐに読めそうな感じでしたが、内容は濃く深く胸に刻まれました。2017/06/17
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