内容説明
身長175センチ、22歳、処女。いや、「女の童貞」と呼んでほしい―就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。そしてかすかな希望…?第21回太宰治賞受賞作。
著者等紹介
津村記久子[ツムラキクコ]
1978年大阪生まれ。大谷大学文学部国際文化学科卒業。現在は、報告書の製本という、職人と一般事務の中間のような仕事をしている。2005年、『マンイーター』(単行本化にあたり、『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第二十一回太宰治賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
118
再読。この本で初めて津村さんの文章に触れて、「なんかすごく好きな感じ!」と思ったのを思い出す。結構重めの話なのに、ホリガイの行動は時にどこか面白かったりして、暗い話には感じない。ホリガイの根底にある屈折したわかりにくい優しさに、津村さんの作品にずっと通じるモノを感じる。イノギさんとの微妙な関係にはちょっとびっくりだったりもするけれど、冒頭のシーンの意味を知るととても切ないような気持ちに。〝そのときその場所にいられなかったことが悔しい〟〝あなたのことをいつも気にしている〟そんな言葉の優しさが沁みた。2015/09/16
chimako
97
感想が書きづらい。主人公は大学4年生の女子ホリガイ。登場人物はカタカナと漢字とで出てくる。その都度書き出して検証すればよったと後になって思う。ホリガイは児童福祉司を目指し、その職に就く事が決まっている。人は生きていると恐ろしくいろんなとに遭遇する。何よりも焦燥が勝ってしまい 自ら死を選ぶ者もある。生きている証を欲しくて血を流す者もある。想像を超えるような目に遭っても、生きて帰る者もある。自身の体をもて余す者もある。女が好きな女もいる。自ら死んだ友の遺書が一人の子供を助けることもある。とにかく今は生きる。2017/03/11
❁かな❁
79
津村作品2作目です!ミュージックブレスユーに出てくる主人公のキャラに近い感じの主人公ホリガイはポチョムキン(女の童貞・笑)です。最初どんなお話になるか予想もつかず日常が津村さんらしい文体でゆるいユーモアも含みながら描かれていきます。後半には最初の方でよくわからなかった事がわかってきて、とても重いエピソードもいくつも出てきます。ホリガイの優しさ、正義感を感じました。他の登場人物も個性的でイノギさん、オカノなどいい子でした。最後の方でタイトルの意味もわかります!デビュー作と思えませんでした!コメントへ続く2013/02/24
えんちゃん
72
大学4年の女子ホリガイ。バイトに行き友人と過ごす普通の日々。淡々とした日常の裏に潜む悲しみ、暴力、やるせなさの影を描く。不器用な人間たちの物語。その時そばにいられなかった悔しさに、深く胸をえぐられる。弱く小さいものを虐げる奴らよ、先にくたばってしまえ。そして大切な君には、この言葉を送ろう。君は永遠にそいつらよりも若い、と。2021年映画化。主人公のひどく内証的な、熱く冷たい想いをどう表現するのか期待。2020/08/18
里季
71
津村さんの初期の作品。太宰治賞受賞。お仕事小説に入る前の大学生たちを描いたもので、この作品もまた私のお気に入りとなった。心の動きを捕らえるのがうまい作家だ。登場する大学生全員に好感が持てる。天真爛漫な子や繊細な子、鬱屈したものを持つ子、などそれぞれが一生懸命な感じがしていい。「君」が誰かわからなかったけれど、主人公ホリガイの今を作りだしているカギになる子供だということがわかり、鼻がつんとした。2016/01/07