内容説明
山口にとってのアフリカは、いうまでもなく彼の独創的な人類学的認識論を育んだ最初のフィールドであった。だが、アフリカはそれが開示する神話世界を媒介にして人間文化のマトリクス(母胎)を探求するための特権的な方法論的概念でもあった。そこが、凡百のアフリカニストと山口のアフリカ的出自とを分けるポイントである。フィールド(調査地)としてのアフリカを去ったあとも、山口の中の「アフリカ」はさらに輝きを増して、著作の周囲を創造的に駆けめぐった。本巻は、高度に方法論化された「アフリカ」という概念とイメージを介して、山口の神話学・象徴人類学の達成を概観し、地域研究のなかに閉塞する社会科学の一傾向を鋭く撃つ。
目次
1 いたずら者のメッセージ―概論的に
2 天と地を繋ぐ者―伝播論的に
3 神話の変身―形態論的に
4 野兎と王権の神話―構造論的に
5 破壊と創造の神話論的根拠―象徴論的に
6 反文化のミトロジー―始原論的に
8 「第三世界」の神話―戦略論的に
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
8
元本が岩波新書、かつ山口昌男自身のフィールドワークが反映されているだけあって、五冊の著作集の中でも一番入門書的なポジションに近い。政治の象徴的・演劇的世界にアフリカ神話のトリックスター群像。アナンシ、エシュと向こうの神的悪戯者たちも濃い面々ばかりで、説話を読んでいるだけで楽しい。説話分析の勉強にもなる。文化人類学への山口昌男の批評がこもったエッセイや紀行文もあり、他の新書と並んで山口昌男の思想に入るのにちょうどいい。図書館で著作集をまとめて借りたらこれから読むといいと思う2012/07/13
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