出版社内容情報
「宿命」を引く受けて生きる猟師と熊の交感を描いた表題作をはじめとして、賢治の主要なテーマである「自然」を中心とした童話の傑作24篇を収録する。
内容説明
「宿命」を引き受けて生きる猟師と熊との絆を描いた表題作、「動物園」を自然との交感の場に変質させるシュールな傑作「月夜のけだもの」、ラディカルで屈指の作品といわれる「フランドン農学校の豚」ほか、賢治の主要なテーマである「自然」を中心とした作品二十四篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさ
28
図書館で偶然見つけてそのまま読み始めました。自然を舞台にした宮沢賢治らしい作品たち。何度も読んだことのある作品もあるけど、もちろん何度読んでも素敵。表題作も好きだし、「月夜のけだもの」「黒ぶどう」も好き。すぐに没頭できるのも宮沢賢治ならでは。2020/03/03
テツ
25
生きるということは他者を犠牲にして明日を迎えること。そうした苦悩を延々と続けるということ。我々は生きている限り他の生命を奪わずに存在することは出来ない。憎んでいる訳ではない熊を殺し生命を奪い肉体を捌きその日の糧とする小十郎が解放されたのは熊に殺された瞬間だった。「これが死んだしるしだ。死ぬとき見る火だ。熊ども、ゆるせよ」ようやく穢土から離れ救われた小十郎の遺体を礼拝するように囲む無数の熊たち。殺す方も殺される方も苦しみながら生きている。お互いにその苦しみを憐れみ合うこと。慰めはそこにしかないのかもな。2017/10/11
カッパ
13
宮沢賢治の作品。2015年にアニメのもとにもなったということもあって再読を決意。あちらこちらでこれも傑作だときいていたので読んでみた。長くなく、音読をしながら読んでみた。熊たちと熊を殺して生計をたてる小十郎。小十郎は町ではからんじられている。熊と小十郎の関係は好きあっているともいえる。でも、殺し殺される関係でもあるのだ。因果応報の話とか罪と緩しの話とかいろいろと言われている。議論される作品は素敵な作品だと思うので読んでよかった。2019/07/12