内容説明
時を計ること、その道具(時計)を作ること、そしてその精度を高めることは、政治や産業、科学技術と常に関わり大きな影響を及ぼしてきた。時代と共に1秒の定義も変化している。1秒を計る技術の最前線に迫る。
目次
第1章 時はどのように計られてきたか―時計の歴史(時間とは何か;暦の誕生から「1秒」を刻む振り子時計まで;クォーツ時計で機械と電気が融合した;「計る基準」を定義する)
第2章 時を計る技術の最前線―光格子時計ができるまで(原子時計の仕組み;原子を捕まえて時計にする―原子本来の色を求めて;マイクロ波から光へ;光格子時計の仕組み)
第3章 時間計測の精度を求めると?(光格子時計のその先へ;高精度の時計はどう応用できるか)
著者等紹介
安田正美[ヤスダマサミ]
1971年広島県生まれ。世界一大きな砂時計がある島根県仁摩町で育つ。東京大学で物理工学を学び、1998年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。米国イェール大学博士研究員、東大助手を経て、2005年より、産業技術総合研究所計測標準研究部門時間周波数科波長標準研究室主任研究員。次世代光周波数標準としての光格子時計の研究・開発を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
91
メートル原器のように、あらゆる単位にその基準となるものがあるということ、考えたこともなかった。現在1秒の基準はセシウム原子時計によるもの。近い将来「光格子時計」にその座を譲るらしい。もっとも精度の高い時計づくりを目指して、各国が凌ぎを削っている。第1章の「時」にまつわる歴史はとても楽しく読んだ。著者の専門分野である最先端の時計のしくみ云々は難しすぎて、飛ばし読み。2016/03/05
WATA
73
「時計で時間をはかる」ことをテーマにした本。著者は光格子時計という最新鋭の原子時計の研究・開発者。なぜ人は時間を計ろうとするのかという話から始まり、時計の進化の歴史を経て、将来時計がさらに小型で正確になったら何ができるか、という話で終わる。特に後半の原子時計の話や、未来のテクノロジーの話は他の本にはない内容で面白かった。最先端の測定装置を作るときの苦労話や、誰もが納得する国際標準を決めることの大変さの話など、現役の研究者だからこそ語れる内容も多い。正確にはかる技術の大切さと大変さがよくわかる良書。2014/08/10
ふろんた2.0
30
1秒定義してきたものの変遷。天文学から物理学へと移行する時には学者間の衝突も大きかったらしい。現在の技術でも生活にはなんら影響のないレベルの正確性を持つが、今後10年で新しいものに置き換わる可能性があるらしい。実に奥が深く、妥協なき研究の重要性がわかる。2015/02/10
kakoboo
15
時間を測定することの歴史的変遷、度量衡の考え方、そもそも1秒という定義が日々かわり続けていること、基礎研究の大切さ等、時間測定のプロフェッショナルがどのような研究をしているかから、研究者としての心意気まで幅広く書かれています。理系の内容も多いし一部はやや難しいけどイラストも多くて、わかりやすかった。大変バランスのいいお方だなと感じました。 何より日本に住んでいると多くの基礎研究が行われいる地盤があるからこその環境であるということに感謝せねばいけないですね。2015/04/19
いずむ
15
1秒って、ずいぶん長いんだなぁ。紛れもなくその集合で構成されているハズなのに、小さ過ぎて体感するコトもカタチを想像するコトもできない。1の15乃至18乗分の1秒。ボクが1万年と1億年の違いを具体的にイメージできないように、その極小の時間から見れば、1分1秒でさえ、”永遠”。単位をずっとずらしていくと、この本を読んでいた”わずか”1時間ほどの時間でさえ、いったいどれほどの永遠を経てきただろうかと、薄ら寒さすら感じる。そりゃ、それだけの”時間”があれば、宇宙も、地球も、生命ですら必然だろうさ、と今なら思える。2014/09/20